温度マッピング

 
温度マッピングとは一定の容積の空間温度分布のマッピングを行うことで、ライフサイエンス関連では医薬品等の保管庫として使用される冷蔵庫やフリーザー、インキュベータ、恒温槽、医薬品倉庫、輸送用保管設備等が対象となりますが、冷蔵庫やフリーザー、インキュベータ、恒温槽などの機器類は温度分布試験と呼ぶことが多く、日本国内では温度マッピングというと医薬品倉庫、保冷倉庫、輸送用保管設備等の比較的大型な施設や設備を対象とすることが多いようです。



温度マッピングの目的

医薬品の保管及び輸送する際の環境は重要で、医薬品倉庫や車両、コンテナのバリデーション項目の一つとして温度マッピングが行われます。新設の医薬品倉庫や保冷倉庫では倉庫バリデーションの運転時適格性評価(OQ)として無負荷(庫内に何もない)運転時の性能評価を行います。既設の医薬品倉庫や保冷倉庫では性能適格性評価(PQ)として有負荷(通常の保管状態)にて夏季、冬季に温度マッピングを実施することもあります。温度マッピングは保管空間の温度を評価することのほか、温度モニタリングのセンサ位置を決定するためにワーストポイント(高温部/低温部)を求める目的もあります。
また、近年の気候変動や空調機器の劣化等の要因により定期的な温度マッピングが必要という意見もあります。


温度マッピングに関する規定

2018年12月28日付で厚生労働省より、事務連絡「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」として、日本でもGDPガイドラインが正式に発出されました。内容はPIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム)のGDPに準拠したものとなっています。 その中には、「保管場所の使用前に、適切な条件下で温度マッピングを実施すること」、「温度制御装置付きの車両を使用する場合、代表的な条件下で温度マッピングを実施し、必要であれば、季節変動要因も考慮すること」が明記されています。
海外においても温度マッピングに関する関連規制があり、例えば、米国薬局方協会(United States Pharmacopeial Convention 、USPC)が発行した「<usp36 1079>Good Storage And Distribution Practices For Drug Products」の中に施設、専用コンテナ/車両をマッピングする際に考慮すべき要因について記載されています。また、WHOの「Temperature mapping of storage areas」の第2章ガイダンス(Guidance)の2.2 マッピング・プロトコル(The mapping protocol)にはマッピングに関する下記の項目が記載されています。
  • 承認ページや変更管理の履歴
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  • 方法論
  • マッピングのレポートのテンプレート
  • マッピングのレポートのテンプレートを含み、必要に応じて附属書

温度マッピングの実施

医薬品倉庫の温度マッピングを実施する上で、問題となるのが倉庫環境の多様性です。 冷蔵庫やフリーザー、インキュベータ、恒温槽などの機器類は容積により温度分布測定を行う測定ポイントが決められますが、倉庫の場合は管理温度幅、容積が特大から小部屋程度と幅広い点、棚やラックの有無や配置、製品の特性による影響、空調機や空調制御用センサの位置による影響、人の出入りの頻度、ドアや窓の数、季節や外気温に対する影響度などが考えられます。
実際に倉庫の温度マッピングを実施する際には次の点を考慮する必要があります。
  • 測定点の位置と箇所数(間隔、高さ)
  • 測定期間、測定周期
  • 測定方法(通常運転、停電時運転、ドア開放、非常時運転)
  • 測定時期(夏季、冬季)
  • 測定機器の種類
温度マッピングはほとんどの場合、倉庫バリデーションの一部として実施しますので、温度マッピングもバリデーション手法に則り計画書の作成→実施→報告書作成→承認という手続きで行われます。

当社の対応

当社では温度マッピングに適したセンサや測定機器を揃え、その校正サービスも実施しておりますが、温度および湿度のマッピング作業も承っています。特に温度マッピング用の測定器は高精度の無線ロガーを多数所有しており、広大な空間の温度マッピングや多数の倉庫等の温度マッピングを短期間で精度よく測定することが可能です。
また、測定器はFDA 21CFR Part11に準拠したシステムの採用により、データは信頼性を有する電子記録として扱うことができます。
温度マッピングは原則としてバリデーション手法に則り実施いたしますので、計画書、実施方法、報告書等についてはお客様の要求に応じて対応しております。
温度マッピングについては倉庫環境の多様性から、様々な実施形態がありますので、温度マッピング検討の際は是非ご相談ください。


温度マッピング事例

対応製品

温度を計測する無線ロガーとさまざまなインターフェース通信・GPSを搭載した受信器、アプリケーションソフトで構成
モバイル機器にも対応し、用途に合わせてパソコンレスでの運用も可能

1台のパソコンで送信器360台のデータを一元管理、イーサネット上に受信器を最大6台接続でき、各受信器は最大60台の送信器を接続可能
Part11対応のセキュリティ機能を持たせたアプリケーションソフトも用意


記録幅180mmのハイブリッド記録計で6点、12点、24点入力の打点式モデルが用意されています。チャートだけでなくSDカードにも同時にデータ記録が可能で、保存したデータはパソコンでの再生、解析ができます