Chapter 1
なぜ工場は、これほどエネルギーを使うのか
モノづくりの根幹にある「加熱と冷却」
自動車部品、半導体、食品、化学製品など、 私たちの生活を支える多くの製品には、 「加熱する」「冷やす」という工程が関わっています。
金属を所定の性質に仕上げたり、 化学反応を進めたり、 製品を決められた状態に整えたりするためには、 必要な温度まで加熱し、 その状態を維持しなければならない場合があります。
炉やボイラーなどで熱をつくり、 必要な状態を保つこと自体が、 工場のエネルギー使用量に関わっています。
だからこそ工場の脱炭素では、 「エネルギーを使わない」ではなく、 必要なエネルギーを、どこで、どのように使っているか を考えることが重要になります。
Chapter 2
脱炭素と品質は、どう両立するのか
「省エネだから」と条件を変えればよいわけではない
製造現場にとって、 品質を守ることは最優先される条件の一つです。
そのため、 省エネを目的に加熱条件を変えたり、 処理時間を短くしたりしても、 製品品質や工程の安定性を損なえば、 本来の目的を達成できません。
必要なのは「減らす」ことより「無駄を見つける」こと
そこで重要になるのが、 品質を維持するために本当に必要な条件と、 これまでの経験から安全側に設定されている条件を 分けて考えることです。
そのためには、 工程の状態を客観的なデータとして把握する必要があります。
Chapter 3
「逃げていく熱」をどう考えるか
熱は温度の高いところから低いところへ移動する
熱には、 温度の高いところから低いところへ移動する性質があります。
工場の設備でどれだけ効率よく熱をつくっても、 設備の壁、配管、開口部などを通じて、 周囲へ熱が移動していきます。
どこから、どの程度の熱が逃げているのか
断熱を施していても、 熱の移動を完全になくすことはできません。
さらに難しいのは、 熱の移動や温度の分布を 肉眼だけで正確に把握することが難しいことです。
そこで、 温度を測定し、 時間や場所による変化を記録することが、 改善の出発点になります。
Chapter 4
「測る」ことが改善の第一歩になる
現場では、 「この設備は少し熱い気がする」 「この場所は温度が高そうだ」 といった経験にもとづく気づきが、 改善のきっかけになることがあります。
しかし、 その感覚だけでは、 どこに問題があるのか、 どの程度の対策が必要なのかを 共通の基準で判断することが難しくなります。
Measure
測る
温度や設備の状態を把握し、 現在どのような状態なのかを確認します。
Record
記録する
時間や場所による変化を残し、 改善前後を比較できるようにします。
Compare
比較する
正常時、異常時、 改善前、改善後などを比較します。
Improve
改善する
データをもとに、 対策の優先順位を考えます。
脱炭素とは、 単にエネルギーの使用量を我慢して減らすことではありません。
必要な熱を必要な場所へ届け、 不要な熱の損失を見つけ、 設備や工程をより効率よく使える状態へ近づけていく。
そのための第一歩が、 「まず測って、現状を知ること」 です。
Next episode
次回は「勘と経験」を考えます
製造現場には、 長年の経験から身についた 「勘」と「経験」があります。
それをデータに置き換えることは、 ベテランの技術を否定することなのでしょうか。
第2話では、 「勘と経験の正体」 をテーマに、 数値化することが現場や組織に何をもたらすのかを考えます。
Series
工場の脱炭素シリーズ
第1話〜第3話
- 第1話 なぜ、工場の脱炭素は一筋縄ではいかないのか?
- 第2話 勘と経験の正体
- 第3話 どこから熱は逃げるのか
この連載では、 工場の脱炭素を「エネルギーを減らす」という視点だけでなく、 品質、熱、現場の経験、計測、データ、改善という つながりから考えていきます。
次回からは、 一つずつテーマを掘り下げていきます。
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シリーズを続けて読む
第1話では、 工場の脱炭素が難しい理由を 「品質」と「熱」の視点から考えました。
第2話では、 製造現場を長年支えてきた「勘と経験」に注目し、 それをデータと組み合わせて 組織の知恵として活かす方法を考えます。