しかし、温度を測ること自体が目的ではありません。
製品の品質を安定させたい、設備の異常に気付きたい、 温度を一定に保ちたい、記録を残したい―― 目的によって、知る必要がある温度も、適した測り方も変わります。
そのため温度計測では、最初から温度計やセンサを選ぶのではなく、
「何を実現するために、何の温度を知る必要があるのか」 から考えることが重要です。
温度計測そのものについて知りたい場合は、 ここから基本的な考え方を確認していきます。
温度を測ることで、それまで分からなかった対象や設備、 工程の状態を数値として知ることができます。
「今、何℃なのか」
「どこが熱いのか」
「温度はどのように変化しているのか」
まず温度を知ることが、 その後の判断や行動の出発点です。
さらに、測った温度を目標値や基準値、 過去の状態、ほかの測定点などと比較することで、 正常なのか、異常なのか、 どのように変化しているのかを 判断するための情報にもなります。
狙った品質で、安定して作りたい
製品や材料、工程の温度を把握し、 ばらつきや不良を減らして、 目的とする品質を安定して実現します。
異常に早く気付き、問題を防ぎたい
いつもと違う温度や変化を捉え、 設備の故障や過熱、製品への影響、 人の安全に関わる問題などに早く気付けるようにします。
温度を安定させたい
測定した温度をもとに加熱や冷却などを調整し、 目標とする温度を維持して、 設備や工程を安定して動かします。
工程を改善し、もっと効率よくしたい
温度の変化や分布、蓄積したデータなどを比較・分析し、 温度ムラ、歩留まり、生産性、 エネルギー使用量などの改善につなげます。
温度を記録し、あとから確認・説明したい
温度履歴を残し、 製造条件や試験条件の確認、品質管理、 監査、顧客への説明などに活用します。
試験・評価・研究開発に使いたい
温度による変化や現象を捉え、 試験や評価、新しい製品・材料・製造条件などの検討に利用します。
温度を測る目的は一つとは限りません。 例えば、温度を制御しながら同時に記録し、 異常を監視し、蓄積したデータを改善に利用することもあります。
目的によって、知る必要がある温度も、 測る場所も、必要な精度や応答性も変わります。
同じ設備や工程の中にも、さまざまな温度があります。
例えば工業炉であれば、 製品や材料の温度、炉内の雰囲気温度、 ヒータや炉壁など設備の温度などがあります。
さらに製品の温度でも、 表面と内部、中心部では同じ温度になるとは限りません。
つまり「炉の温度を測りたい」 「製品の温度を測りたい」だけでは、 まだ何を測るべきか決まらない場合があります。
何を測るのか
製品・材料なのか、設備・部品なのか、 液体や気体などの媒体なのか、 周囲の環境なのか。
そのどこを測るのか
表面なのか、内部なのか、 中心なのか、特定の部位なのか。
どのように温度を捉えたいのか
一点の温度が分かればよいのか、 複数点を比較したいのか、 温度分布や時間による変化を知りたいのか。
例えば、製品品質を確認したいにもかかわらず、 測りやすい炉内雰囲気温度だけを測っても、 その値が製品内部の温度を表しているとは限りません。
「センサを取り付けやすい場所」ではなく、 「その測定値を何のために使うのか」から 測定位置を考えることが重要です。
また目的によって、 必要な温度範囲、精度、応答性、測定頻度、 使用環境なども変わります。
知りたい温度が明確になったら、 その目的や条件に合った測定方法を考えます。
温度の測り方は、大きく 接触式と 非接触式に分けられます。
接触式
対象に温度センサを接触・挿入して温度を測ります。 代表的なセンサには、 熱電対や測温抵抗体(RTD)があります。
製品内部や液体などの温度を直接測りたい場合や、 センサを設置して継続的に測定したい場合などに利用されます。
非接触式
対象に触れず、 主に対象から放射される赤外線などを利用して 表面温度を測ります。
高温物体、移動・回転している対象、 接触することが難しい対象などの測定に利用されます。
接触式と非接触式は、 どちらが優れているというものではありません。
何の温度を知りたいのか、対象に触れられるのか、 温度範囲、必要な精度や応答性、 対象の状態などから適した方法を考えます。
熱電対、測温抵抗体、放射温度計などの特徴や 詳しい選び方は、それぞれの専門ページで確認できます。
温度計測では、 センサだけを見て測定の良し悪しを判断することはできません。
温度を知りたい対象から、 実際に温度情報として利用するまでには、 次のような一連のつながりがあります。
01
測定対象・測定位置
知りたい温度と、実際に測る場所が合っているか。
02
温度センサ
対象や目的に合ったセンサを選べているか。
03
設置
挿入や接触状態などが適切か。
04
配線・信号伝送
配線、接続、信号伝送の途中に問題がないか。
05
測定器
受け取った温度情報を適切に表示・記録できるか。
例えば、高い精度を持つ温度センサを使用していても、 知りたい温度と測定位置が合っていない、 センサの挿入や接触状態が適切でない、 周囲へ熱が逃げている、 配線や電気ノイズの影響を受けている、 センサが使用によって変化・劣化している、 測定器側の設定や条件が適切でない、 といった場合には、 目的に必要な温度を正しく捉えられないことがあります。
高精度なセンサを使うことと、 高精度な温度計測を実現することは同じではありません。
温度計測では、センサだけでなく、 測定位置、設置、配線、測定器、 使用環境などを含めた 測定系全体で考えることが重要です。
温度を品質の判断や制御、監視、記録などに使用する場合、 もう一つ確認しておきたいことがあります。
測定した温度そのものを、信頼して使えるでしょうか。
ここまで見てきたように、 温度の測定結果には、測定位置や設置方法、 周囲環境、配線、測定器など、 さまざまな要因が影響します。
温度センサや測定器は、 それぞれ一定の精度や許容差を持っています。 また、長期間の使用や使用環境などによって、 測定値が変化していくこともあります。
そのため、品質の判断や管理などに測定値を使用する場合には、 「このセンサや測定器が示している温度は、 基準となる温度に対してどの程度の差があるのか」 を確認することが重要になります。
その確認に用いられるのが校正です。
校正では、 温度センサや測定器が示す値と、 基準となる値との関係を確認します。
ただし、校正によってセンサや測定器の状態を確認できても、 それだけで実際の現場において 目的の温度を正しく測れているとは限りません。
例えば、センサそのものに問題がなくても、 測定位置や設置状態が目的に合っていなければ、 知りたい温度とは異なる値を測っている可能性があります。
「目的の温度を適切に測れているか」 と、 「その測定に使用しているセンサや測定器の示す値が妥当か」 の両方を考えることが重要です。
校正や測定値の信頼性については、 専門ページで詳しく確認できます。
測った温度は、 状態を知るだけでなく、 目的に応じてさまざまな形で利用できます。
また、一つの目的に対して 複数の使い方を組み合わせることがあります。
例えば品質を安定させるために、 温度を基準と比較して判断し、 制御に使い、同時に記録し、 蓄積したデータを後から分析することもあります。
判断する
測定した温度を目標値、規格、 許容範囲、過去の状態などと比較し、 正常かどうか、次に何をするべきかを判断します。
制御する
現在の温度を目標値と比較し、 加熱や冷却などを調整します。 その結果を再び測定することで、 目標とする温度へ近づけ、安定させます。
異常に気付く・監視する
温度を継続して確認することで、 設定した範囲から外れたときや、 いつもと違う変化が起きたときに 気付くことができます。
記録し、あとから確認・説明する
温度履歴を残すことで、 製造時や試験時の状態を後から確認したり、 品質管理、監査、顧客への説明などに 利用したりできます。
分析・改善する
蓄積した温度データや複数の測定結果を比較・分析し、 温度ムラ、品質、生産性、 エネルギー使用量、設備状態などの改善に活用します。
これらは必ずしも順番に行うものではなく、 目的に応じて同時に行われることもあります。
温度は、一度測って終わりとは限りません。
1
測る・知る
温度を測り、 対象や設備、工程の状態を知ります。
2
判断・行動する
目的に応じて、 制御、監視、記録、分析・改善などに活用します。
3
結果を確認し、また測る
状態が変わったら、 その結果を確認するために再び温度を測ります。
このように、温度を測ることから、 その情報を利用し、結果を再び確認するところまでを 一連の流れとして考えることで、 個々の機器だけではなく、 目的を実現するための温度管理全体を考えることができます。
チノーでは、 計測・制御・監視・校正などをつなげて 温度管理を考える「温度ループ」を紹介しています。
測定値を品質判断や管理などに利用する場合は、 測定系全体や、 使用しているセンサ・測定器の状態についても確認します。
INDIVIDUAL SUPPORT
測定対象や使用環境など、 個別条件によって測定方法や機器構成の判断が必要な場合は、 チノーへご相談ください。
技術相談・お問い合わせダウンロードには会員ログインが必要です。