Chapter 1

1. 温度計測とは?

温度計測とは、対象の温度を目的に合った方法で測定し、 得られた値を判断や管理に利用できる情報として扱うことです。

温度を測ること自体が目的ではありません。 例えば製造現場では、 製品が適切な温度になっているか、 工程条件が維持されているか、 異常な温度変化が起きていないかなどを判断するために温度を測ります。

温度を測ることは、現場の状態を知ること

温度を数値として捉えることで、 感覚だけでは難しい比較、記録、監視、判断ができるようになります。

例えば、設備の温度が「少し高くなった」と感じるだけではなく、 時間ごとの温度変化を記録すれば、 過去の状態と比較して変化を確認できます。

「測定」と「計測」について

「測定」は、対象の量を測って値を得る行為を指すことが多い言葉です。 一方で「計測」は、 目的に応じて測定方法や条件を考え、 得られた結果を評価・利用するところまで含めて使われることがあります。

ただし、実務では両者が厳密に区別されているとは限りません。 本記事では「温度計測」を、 温度の数値を得るだけではなく、 目的に合った温度を捉え、その値を判断や管理に利用すること として説明します。

「測る」という行為そのものについては、 センシングとは? で詳しく解説しています。

Chapter 2

2. まず「何の温度を知りたいのか」を決める

温度計測を検討するとき、 最初に決めるのは測定器ではありません。 何の温度を知りたいのかを明確にすることが出発点です。

同じ設備でも、知りたい温度は一つとは限らない

例えば工業炉では、 炉内の雰囲気温度、ヒーターの温度、 製品の表面温度、製品内部の温度など、 複数の温度を考えることができます。

これらは同じ設備に存在する温度ですが、 同じ値になるとは限りません。

雰囲気温度

炉や槽など、その空間にある気体や流体の温度。

表面温度

製品や部材の表面がどの程度の温度になっているか。

内部温度

製品や材料の内部がどの程度の温度になっているか。

測定位置によって、得られる温度は変わる

対象に温度分布がある場合、 どこを測るかによって得られる値は変わります。

そのため、 「センサを取り付けやすい場所」だけを基準にするのではなく、 その測定値を何のために使うのか を考えて測定位置を決めることが重要です。

ポイント
温度計測の第一歩は、 「何℃まで測るか」ではなく、 「何の温度を知りたいのか」を決めることです。

Chapter 3

3. 温度はどのように測る?

知りたい温度が決まったら、 次にその温度をどのような方法で捉えるかを考えます。

温度計測にはさまざまな方法がありますが、 代表的な考え方として、 接触式と非接触式に分けて考えることができます。

方式 代表例 特徴 確認したいこと
接触式 熱電対、測温抵抗体など 対象と熱的な関係をつくって測定する 設置、挿入深さ、熱の逃げ、配線など
非接触式 放射温度計、熱画像計測装置など 対象に触れずに主に表面温度を測定する 放射率、距離、視野、反射、周囲環境など

接触式温度計測

接触式では、熱電対や測温抵抗体などの温度センサを使用します。 センサが測定対象との熱交換によって温度を捉え、 その変化を電気信号として扱います。

接触式では、 センサが測定対象と適切な熱的関係になるように設置する必要があります。 そのため、センサの種類だけでなく、 測定位置や取り付け方法も重要です。

温度センサガイドを見る

非接触式温度計測

非接触式では、 対象物から放射される赤外線などを利用して、 主に表面温度を測定します。

高温物、移動体、触れることが難しい対象などでは、 非接触測定が有効な場合があります。 一方で、接触式とは異なる測定条件を確認する必要があります。

赤外線計測とは?

Chapter 4

4. 温度計測は「測定系」全体で考える

温度計測では、センサだけを見ていてはいけません。

本記事では、 温度を捉えてから、その情報を表示・記録などに利用するまでに関係する要素 をまとめて「測定系」と考えます。

温度測定の基本的な流れ

1

測定対象・測定点

2

温度センサ

3

配線・接続

4

測定器

5

表示・記録

センサだけで測定精度は決まらない

高い精度を持つ温度センサを選んでも、 測定位置が目的と合っていない、 設置が適切でない、 配線の影響を受けている、 測定器側の条件が適切でないなどの場合には、 目的に合った温度を得られないことがあります。

つまり、 高精度なセンサを使うことと、高精度な温度計測を実現することは同じではありません。

専門用語をすべて覚える必要はありません

熱電対の補償導線や測温抵抗体の3線式・4線式など、 温度計測にはさまざまな専門的な要素があります。

ここで重要なのは、それぞれの用語をすべて覚えることではありません。 温度計測はセンサ一個だけで完結するものではなく、 測定対象から測定器までを含めて考える という視点を持つことです。

Chapter 5

5. 正しく温度を測るために確認すること

適切な温度センサを選んでも、 実際の測定条件が合っていなければ、 測りたい温度を適切に捉えられない場合があります。

確認項目 確認すること
測定位置 目的の温度を代表する場所を測れているか
測定方式 接触式・非接触式など、対象に適した方法か
設置 センサが目的の温度を適切に捉えられる状態か
応答性 必要な温度変化を追従できるか
使用環境 高温、振動、湿気、腐食、ノイズなどの影響はないか
必要な精度 工程や用途に必要な精度を満たせるか

測定位置

まず確認したいのは、 本当に知りたい温度を測れる位置になっているかです。 測定対象に温度分布がある場合、 測定点によって結果が変わります。

設置方法

接触式温度センサでは、 取り付け位置や挿入状態によって、 測定値が影響を受けることがあります。

配管、槽、炉、表面など、 対象によって適した設置方法が異なります。

温度センサの正しい取り付け方を見る

応答性

温度が変化したとき、 センサの指示値が瞬時に変化するとは限りません。 センサの構造や取り付け条件などによって、 温度変化への追従性は変わります。

急激な温度変化を追いたい工程では、 必要な応答性をあらかじめ考えることが重要です。

使用環境

温度計測では、対象物だけでなく、 センサ、配線、測定器が置かれる環境も確認します。

  • 高温・低温
  • 振動・衝撃
  • 湿気・結露
  • 腐食性雰囲気
  • 粉じん
  • 電気ノイズ
  • 周囲からの熱放射

必要な精度

温度センサや測定器には、それぞれ仕様上の精度や許容差があります。 ただし、機器の仕様だけで実際の測定値の信頼性が決まるわけではありません。

必要な精度は、 測定対象、工程の許容範囲、 設置条件、測定器などを含めて考える必要があります。

Chapter 6

6. その測定値を信頼できる?

ここまでで、 「何の温度を測るか」 「どうやって測るか」 「測定系をどう構成するか」 を考えてきました。

そこで、もう一つ重要な問いがあります。

その測定値を、どの程度信頼して使えるでしょうか?

機器の仕様上の精度だけでは決まらない

温度センサや測定器には仕様上の精度があります。 しかし、その仕様を満たす機器を使用すれば、 現場で得られる測定値も自動的に同じ信頼性になるわけではありません。

実際の測定では、 測定位置、設置、周囲環境、配線、測定器、 経時変化など、さまざまな要素が関係します。

基準と比較して確認する「校正」

適切な測定系を構成したうえで、 センサや測定器が示している値そのものを確認する方法の一つが校正です。

校正では、 測定器やセンサの示す値を基準となる値と比較し、 その差を確認します。

ただし、 校正されていることだけで、 実際の現場で目的の温度を正しく測れるとは限りません。

校正は一定の条件で基準と比較して行われるため、 実際の現場では、 測定位置や設置状態、周囲環境なども合わせて考える必要があります。

校正、トレーサビリティ、JCSS、校正証明書、 不確かさなどについては、 校正とは? で詳しく解説しています。

Chapter 7

7. 測った温度をどう使う?

温度計測は、温度を表示するところで終わりではありません。 得られた温度情報は、 記録、監視、制御など、さまざまな用途に利用されます。

記録する

温度変化を継続的に保存することで、 工程条件、温度履歴、試験結果などを後から確認できます。

記録計の選び方を見る

監視する

温度の変化や異常を継続的に把握することで、 異常時の対応を早めることができます。

監視とは?

制御する

測定した温度をもとに、 ヒーターや冷却装置などを調整し、 目標温度に近づけることができます。

制御とは?

温度を測る、記録する、監視する、制御する、 そして測定値の信頼性を維持する。 これらを一連の流れとして考える考え方が、 CHINOの「温度ループ」です。

温度ループとは?

Check list

8. 温度計測を考えるときのチェックリスト

温度計測を新しく検討するときや、 既存の測定方法を見直すときは、 次の項目を順番に整理してみましょう。

  • なぜ温度を測るのか
  • 本当に知りたいのは何の温度か
  • どこを測れば、その温度を捉えられるか
  • 接触式と非接触式のどちらが適しているか
  • どの温度センサ・測定器を使うか
  • 測定対象、センサ、配線、測定器を含めた測定系は適切か
  • 必要な精度と応答性はどの程度か
  • 周囲環境からどのような影響を受けるか
  • 測定値を記録・監視・制御する必要があるか
  • 測定値の信頼性をどのように確認するか

すべてを最初から決める必要はありません。 分かる範囲から整理することで、 適した温度計測方法や機器を検討しやすくなります。

温度計測機器の選び方を見る

Next step

温度計測をさらに詳しく知る

そもそも温度とは?

何を使って測る?

方式を深掘りする

測定値を信頼する

FAQ

よくある質問

Q. 温度計測では、なぜ最初に測定対象を決めるのですか?

A. 同じ設備でも、雰囲気、表面、内部など、 知りたい温度が複数あるためです。 測定対象が変われば、適した測定位置や測定方法も変わります。

Q. 高精度な温度センサを使えば、正しく温度を測れますか?

A. 必ずしもそうとは限りません。 測定位置、設置、配線、測定器、周囲環境なども測定値に影響します。 センサ単体ではなく、測定系全体で考えることが重要です。

Q. 接触式と非接触式はどちらを選べばよいですか?

A. どちらが常に優れているわけではありません。 測定対象、表面・内部のどちらを知りたいか、 温度範囲、精度、応答性、設置環境などから選びます。

Q. 放射温度計で対象物の内部温度は測れますか?

A. 一般的な放射温度計が測定するのは対象物の表面温度です。 内部温度を知りたい場合は、 熱電対や測温抵抗体などの接触式温度センサを検討します。

Q. 温度センサは、校正していれば必ず正しい温度を測れますか?

A. 校正は測定値の信頼性を確認する重要な方法の一つですが、 校正だけで現場の測定状態すべてが決まるわけではありません。 測定位置、設置、周囲環境なども合わせて考える必要があります。

Q. 「測定系」とは何ですか?

A. 本記事では、 測定対象からセンサ、配線、測定器、表示・記録まで、 温度を捉えて利用するまでに関係する要素をまとめて「測定系」としています。

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温度計測の方法や構成に迷ったら

測定対象、温度範囲、必要な精度、 設置環境、記録・監視・制御の有無などを整理することで、 適した温度計測方法を検討しやすくなります。

条件がすべて決まっていない場合でも、 分かる範囲からご相談いただけます。

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Reference

参考情報

本記事では、温度計測を考えるための一般的な考え方を整理しています。 個別製品の測定範囲、精度、使用条件、取付条件などは製品ごとに異なるため、 実際の導入時には最新の製品仕様書、カタログ、取扱説明書などをご確認ください。