なぜ炉内を見る必要があるのか

炉内監視というと「炉内温度を監視すること」をイメージするかもしれません。もちろん温度は重要な管理項目です。 しかし実際の製造プロセスでは、温度の数値だけでなく、炉内の状態そのものを確認したい場合があります。

炎や燃焼状態を見る

セメントキルンやごみ焼却炉など、燃焼を伴う設備では、ある場所が何℃かだけでなく、炎が正常に存在しているか、燃焼状態に変化がないかも重要な管理ポイントになる場合があります。

材料や焼成状態を見る

炉内では、材料を加熱・焼成・溶融することで製造プロセスが進みます。例えばロータリーキルンでは、炉が回転しながら内部の材料が移動します。 温度に加えて、材料の状態や動き、分布、堆積などを把握することが、製造状態を判断する材料になる場合があります。

発火や異常な状態を早期に把握する

監視が必要なのは炉の中だけとは限りません。炉から出た直後の材料はまだ高温で、後工程へ搬送する途中で発火したり、異常に堆積したりすることがあります。 こうした状態を早期に把握できれば、品質だけでなく、設備の安定稼働やトラブルの未然防止につなげられる可能性があります。

炉内が見えないと、何が問題になるのか

炉内で何が起きているのか分からなければ、状態の変化や異常を早い段階で把握することが難しくなります。 温度の数値だけでは、炎の状態、材料の動き、異常な堆積などを十分に把握できない場合があります。 その結果、製造プロセスの変化への気付きの遅れ、品質への影響の把握の遅れ、設備異常の発見の遅れ、さらには設備トラブルや操業停止につながる可能性があります。

炉内監視の目的は、単なる温度管理ではありません。 「炉の中で何が起きているのか」を把握し、製造プロセスや設備を管理することも重要な目的です。

なぜ炉内を見ることは難しいのか

炉内を見る必要があっても、一般的なカメラを設置すれば解決するわけではありません。炉内は、計測機器にとって非常に厳しい環境だからです。

高温環境

炉内は非常に高温で、一般的なカメラや電子機器をそのまま設置することはできません。 カメラだけでなく、レンズや周辺機器も熱から保護する必要があります。

粉塵や煙

設備によっては粉塵や煙が発生し、目視では内部の様子を十分に確認できないことがあります。 また、レンズなどの光学部品に粉塵が付着すれば、安定した監視を続けることも難しくなります。

水蒸気やガスなどの影響

設備によっては水蒸気やガスも存在します。測定光路上の水滴・ちり・煙・水蒸気はできるだけ避け、避けられない場合にはエアパージなどによる対策が必要になります。 さらに、振動、外部からの熱放射、結露なども、安定した監視を行ううえで考慮する必要があります。

炉内監視では、「何を見るか」と同時に「どうすれば見続けられるか」まで考える必要があります。

炉内の状態を知る方法と、熱画像による監視

炉内を管理する方法は一つではありません。設備や目的に応じて、熱電対、放射温度計、熱画像などを使い分けます。 重要なのは、どの方法が優れているかではなく、何を知りたいのかによって適した方法が異なることです。

方法 主に分かること 炉内監視で考えるポイント
熱電対 特定位置の温度 工業炉で広く使われる接触式センサ。炎の状態や材料の動き、広い範囲の温度分布を一つの値から把握することは困難です。設備によっては、腐食性のある雰囲気などで保護管そのものが厳しい環境にさらされます。
放射温度計 狙った対象の温度 離れた場所から非接触で測定でき、高温の対象に有効です。ただし基本的には狙った対象の温度を把握する計測器で、広い範囲の状態を見る用途とは異なります。
熱画像 温度分布 温度を面として捉え、高温部や状態の変化を画像として確認できます。

「温度を測る」から「画像として見る」へ

炉内の広い範囲で、どこが高温なのか、温度分布がどうなっているのかを確認したい場合には、温度を「点」ではなく「面」として捉える方法が必要になります。 その一つが熱画像による監視です。近赤外域の熱放射を捉えるカメラを利用することで、高温の対象を画像として捉えられる場合があります。 検出した熱エネルギーを熱画像として表示すれば、温度を一つの数字ではなく、画面上の温度分布として確認できます。

点で見る

特定の場所の温度を数値で確認する。

面で見る

温度分布を画像として確認し、高温部や状態の変化を把握する。

ロータリーキルン炉内の温度分布を熱画像で監視した例
熱画像による監視例(ロータリーキルン炉内の温度監視)

炉内監視装置とリレーレンズ

高温の炉内を画像として監視するために使われるのが、炉内監視装置です。 高温の炉内に一般的なカメラをそのまま入れることは難しいため、炉内から届く熱放射をカメラへ伝える光学系と、機器を熱から守る仕組みを組み合わせます。

リレーレンズとは

リレーレンズとは、簡単にいえば、炉内から届く熱放射を、炉外側のカメラへ伝えるための光学系です。 カメラそのものを高温の炉内へ置くのではなく、炉壁付近までリレーレンズを導入し、その先にある炉内をカメラで捉えます。 光学系とカメラを分けて構成することで、高温の炉内を炉外から監視できます。

高温環境から機器を守る

リレーレンズやカメラは高温環境にさらされるため、冷却や保護の仕組みが必要です。 また、粉塵などが光学部品に付着すると安定して捉えることが難しくなるため、設備条件に応じてエアパージなどの対策を組み合わせます。 炉内監視装置は、単にカメラを炉へ取り付けるものではなく、炉内を見るための光学系と、それを過酷な環境から守る仕組みを組み合わせた装置です。

何を見るか・どんな設備か・確認すること

炉内監視装置を導入すれば、それだけで設備の状態が分かるわけではありません。 重要なのは、「この設備では何を監視する必要があるのか」をあらかじめ考えることです。

炉内で見るべき管理ポイント

  • 炎・燃焼状態:炎が正常に存在しているか、燃焼状態に変化がないか
  • 材料・焼成状態:材料の状態や動き、焼成プロセスの状態
  • 異常な堆積:材料が特定の場所へ異常に堆積していないか
  • 発火・異常高温部:高温材料の搬送工程などでの発火や、局所的な高温状態
  • 温度分布:炉内のどこが高温で、どこが低温か

どのような設備で使われるのか

炉内監視は特定の業界だけの技術ではなく、「高温の設備内部で何が起きているのかを確認したい」という課題があれば検討対象になります。

設備監視のイメージ
セメント・ロータリーキルン炎、焼成状態、材料の状態など
ごみ焼却炉燃焼状態や炉内の状態
ガラス溶融炉高温の溶融プロセス
鉄鋼・加熱炉炉内の温度分布や加熱状態
熱処理炉・焼結炉加熱・焼成などの状態(※測定温度範囲に該当する場合)

カタログスペックだけでは決められない

炉内監視では、対象の温度だけで適用可否を判断することはできません。次のような設備条件によって、必要な構成が変わります。

確認することなぜ重要か
設置位置どこから見るかによって、見える範囲や対象が変わります。
測定距離視野と測定対象の大きさに関係します。
粉塵・煙・水蒸気光路を妨げる要因になる場合があります。
周囲温度カメラや光学系を保護する冷却方法に関係します。
監視対象「炎を見る」のか「温度分布を見る」のかで、必要な構成が変わります。

装置の最高測定温度だけでなく、実際の設備で「見たいものが見えるか」を確認することが重要です。

チノーの炉内温度監視装置「CPA-RA」

チノーの炉内温度監視装置CPA-RA

チノーでは、リレーレンズを利用して炉内からの熱放射を捉え、炉内の状態を画像として監視する方式の装置を提供してきました。 その後継モデルとして登場したのが、炉内温度監視装置 CPA-RAです。

リレーレンズを炉内へ導入し、炉内の広い範囲の温度分布を熱画像として監視します。720×540画素の高画素センサにより、炉内の温度分布をより鮮明に確認できる構成です。

主な仕様

測定波長0.9μm(近赤外)
画素数720×540
測定温度範囲低温タイプ:700~1450℃(4段切替)/高温タイプ:1200~2550℃(5段切替)
精度定格測定値の±2%
フレームレート30Hz ※動作環境や運用状況により変動します
リレーレンズ長300mm/440mm/620mm/840mm/1040mm
視野角45°/60°/90°
電源・接続PoE(LANケーブルで給電・通信)/1システムで最大4台

炉の大きさ、測定距離、監視したい範囲に応じて、リレーレンズ長と視野角を選択します。 なお、炉外から窓越しに測定するタイプとして、同シリーズに「CPA-RAS」もラインアップされています。

熱画像をさまざまな視点から確認する

高温熱画像計測ソフト(CPY-VXGR)は、スポット/ライン/エリア計測、トレンド表示、放射率補正、データ保存に対応しています。 熱画像を表示するだけでなく、必要な場所に着目して温度を確認し、時間的な変化を追うといった使い方ができます。

PoE対応でシステム構成を簡素化

PoEにより給電と通信を1本のLANケーブルで行えるため、配線を簡素化できます。1システムで最大4台まで接続でき、複数箇所を監視する構成にも対応します。

炉内温度監視装置 CPA-RA 製品ページを見る

炉内監視についてよくある質問

炉内監視と炉内温度測定は何が違いますか?

炉内温度測定は温度を把握することが中心です。一方、炉内監視では温度分布などを画像として捉え、炉内の状態変化を把握することを目的とする場合があります。

放射温度計では炉内監視できませんか?

放射温度計は非接触で温度を測定する有効な方法です。一方、炉内の広い範囲を画像として捉え、温度分布や状態の変化を確認したい場合には、熱画像による監視が適している場合があります。

どのような炉でも炉内監視装置を使えますか?

すべての設備で同じ構成が使えるわけではありません。温度、測定距離、視野、粉塵や煙、設置位置など、実際の設備条件を確認したうえで適用方法を検討する必要があります。

炉内監視では、まず何を考えればよいですか?

まず、「何を見たいのか」「なぜ見たいのか」「見えないことで何が問題になるのか」を整理することをおすすめします。

まとめ:炉内には「温度」以外にも見るべきものがある

温度を測れていることと、炉内の状態が分かっていることは必ずしも同じではありません。 もし現在、「炉の中で何が起きているのか分からない」という課題があるのであれば、温度計測だけでなく、炉内そのものを「見る」という監視方法も選択肢になります。 炉内監視という考え方を知ることで、これまで見えていなかった管理ポイントに気付けることがあります。

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炉内の状態を監視したい方へ

炉内監視では、炎、材料、焼成状態、堆積、発火、温度分布など、何を監視するのかによって適した方法が変わります。 高温、粉塵、測定距離、設置位置など、実際の設備条件を踏まえて適用方法を検討することが重要です。

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