Chapter 1
熱が移動する3つのしくみ
熱は、温度の高いところから低いところへ移動します。 その移動のしかたは、 大きく伝導・対流・放射に分けて考えることができます。
Conduction
伝導
物体の内部や、 接触している物体の間を通じて 熱が移動する現象です。
例えば、 加熱された炉の内側から壁を通じて 外側へ熱が伝わる現象が該当します。
Convection
対流
空気や液体などの流れによって 熱が運ばれる現象です。
開口部から高温の空気が流出する場合など、 流体の移動とともに熱も移動します。
Radiation
放射
物体から放出される電磁波によって 熱が伝わる現象です。
高温になった炉壁や製品から 周囲へ熱が伝わる場合などに関係します。
実際の設備では、 伝導・対流・放射のどれか一つだけが起きているとは限りません。 複数の熱移動が同時に起きています。
Chapter 2
工場で見落としやすい「熱の逃げ道」
炉の扉や大きな開口部から熱が逃げることは、 比較的イメージしやすいでしょう。
しかし、 工場の熱ロスを考えるときは、 目立つ場所だけを見るのでは十分ではありません。
| 確認する場所 | 考えられる熱の移動 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 炉・設備の表面 | 伝導・放射 | 周囲より高温になっている場所がないか |
| 扉・開口部 | 対流・放射 | 高温空気の流出や開放時間を確認する |
| 配管 | 伝導・対流・放射 | 断熱状態や表面温度を確認する |
| バルブ・フランジ | 伝導・放射 | 周辺配管との温度差や断熱状態を確認する |
| 設備の接続部 | 伝導・対流 | 局所的に温度が高い場所や隙間がないか確認する |
断熱されているから大丈夫、とは限らない
設備や配管に断熱材が使われていても、 施工状態や経年変化、 設備の形状などによって 表面温度に違いが現れる場合があります。
重要なのは、 「断熱材があるか」だけで判断するのではなく、 実際の温度状態を確認することです。
Chapter 3
温度ムラも、見逃したくないポイント
熱ロスというと、 設備から外へ逃げる熱だけを イメージしがちです。
しかし、 炉や装置内部の温度分布も 確認したいポイントです。
設定温度と、すべての場所の温度は同じとは限らない
炉内では、 ヒータの位置、空気の流れ、 製品の配置、扉の開閉などによって、 場所ごとに温度差が生じる場合があります。
そのため、 一つの測定点だけを見ていても、 炉内全体の状態を十分に把握できないことがあります。
温度ムラは品質とエネルギーの両方から考える
温度分布にばらつきがある場合、 製品品質への影響を避けるために 運転条件へ余裕を持たせていることがあります。
そこで温度分布を把握し、 必要な条件と実際の状態を比較することで、 品質を維持しながら改善できる部分がないかを 検討しやすくなります。
炉内温度が安定しない場合は、 ヒータだけでなく、 センサ、制御、負荷、空気の流れなど 複数の要因を確認する必要があります。
Chapter 4
見えない熱ロスを、どう見つけるか
熱は目で直接見ることができません。
そこで、 現場で感じた違和感を出発点として、 温度計測によって状態を確認します。
Step 1
気づく
「この場所だけ暑い」 「以前より設備周辺が熱い」など、 現場の気づきを集めます。
Step 2
測る
温度センサ、放射温度計、 熱画像カメラなどを使い、 温度状態を確認します。
Step 3
比較する
場所による違い、 時間による変化、 改善前後の違いを比較します。
Step 4
優先順位を決める
得られたデータをもとに、 どこから改善を検討するか整理します。
点の温度と、面の温度を使い分ける
特定の場所を継続的に測定したい場合と、 広い範囲の温度分布を確認したい場合では、 適した測定方法が異なります。
温度を測る
非接触で確認する
Next episode
熱ロスが見えたら、単純に温度を下げればいい?
熱の状態を把握できれば、 省エネのために条件を変えたくなるかもしれません。
しかし製造現場では、 エネルギーだけを見て判断することはできません。
そこには、 製品品質という もう一つの重要な条件があります。
第4話では、 「品質と省エネの天秤」 をテーマに、 品質を維持しながら無駄を減らすために 温度計測がどのような役割を持つのか考えます。
Series
工場の脱炭素シリーズ
第1話〜第3話
- 第1話 なぜ、工場の脱炭素は一筋縄ではいかないのか?
- 第2話 勘と経験の正体
- 第3話 どこから熱は逃げるのか