Chapter 1

放射温度計の基本

放射温度計の測定原理を教えてください

あらゆる物体は、その温度に応じた赤外線エネルギーを放射しています。 放射温度計は、その赤外線エネルギーを光学系で集め、 検出器で電気信号に変換して温度を求めます。

一般的な放射温度計が測定しているのは、 対象物の表面温度です。

レーザー照準付きの機種では、 レーザーは主に測定位置を示すために使用されます。

放射温度計の測定原理を詳しく見る

放射率とは何ですか?

放射率(ε)は、 物体表面が放射する赤外線エネルギーの程度を表す係数です。 放射温度計では、対象物に合った放射率を設定することが重要です。

表面の材質や状態によって放射率は異なります。 同じ材質でも、酸化、塗装、粗さなどの表面状態によって変化する場合があります。

放射率について詳しく見る

放射率が分からないときはどうすればよいですか?

まず対象物の材質や表面状態から放射率を確認します。 実際の測定では、接触式温度計との比較などを利用して 設定値を確認する方法もあります。

放射率が分かっているテープや塗料などを使い、 基準となる面を作って比較する方法もあります。

放射率の決め方を詳しく見る

放射温度計は表面温度だけを測るのですか?

一般的な放射温度計で非接触測定できるのは表面温度です。 内部温度を確認したい場合は、 熱電対や測温抵抗体などの接触式温度計を検討します。

放射温度計とサーモグラフィの違いは何ですか?

放射温度計は、特定の一点または狭い領域の温度を測ることを主な目的とします。 サーモグラフィは、温度分布を画像として確認できます。

一点の温度を測りたい場合は放射温度計、 面全体の温度ムラを確認したい場合はサーモグラフィが適しています。

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レーザーで温度を測っているのですか?

温度測定そのものは赤外線エネルギーを利用して行います。 レーザー付き機種では、 レーザーは測定位置を確認するための照準として使われます。

D:S比とは何ですか?

D:S比は、測定距離(Distance)と 測定スポット径(Spot)の関係を示す指標です。

測定距離が離れるほど、 測定対象に対する測定エリアは大きくなります。 対象物より十分小さい測定スポットになる位置から測定することが重要です。

測定対象よりスポットが大きいとどうなりますか?

測定スポット内に対象物以外の背景が入ると、 背景の温度の影響を受ける場合があります。

測定対象がスポット内に十分収まる距離から測定することが基本です。

ガラス越しに測定できますか?

一般的な放射温度計では、 ガラス越しにある対象物の温度を正しく測定できない場合があります。 ガラス自体の影響を受けるためです。

ガラス越しの測定では、 対象とガラスの種類、使用波長などに適した機器を検討する必要があります。

Chapter 2

放射温度計の正しい測り方

どのくらいの距離で測ればよいですか?

取扱説明書に記載されたD:S比や測定視野を確認し、 測定対象が十分に測定スポットへ収まる距離で測定します。

動いているものを正しく測るには?

動いている対象では、測定位置や対象の大きさによって 測定値が変化する場合があります。

対象物を十分に捉えられる位置に設置し、 必要に応じてピークホールドなどの機能を利用します。

反射の影響を避けるには?

鏡面や光沢のある面では、 周囲からの赤外線を反射する場合があります。

高温物が測定視野に入らない角度にしたり、 遮光板などを使用したりして外乱の影響を抑えます。

放射率は毎回変更する必要がありますか?

同じ材質・表面状態を測定するのであれば、 毎回変更する必要はありません。

材質や表面状態が変わる場合は、 適切な放射率設定を確認します。

データを保存できますか?

機種によって、内部メモリや外部機器への出力など、 データ保存に対応しています。 必要な記録点数、保存方法、通信方法を確認して選定します。

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Chapter 3

測れるもの・測りにくいもの

鏡面金属やアルミは測れますか?

鏡面金属やアルミなどは、 放射率が低い場合があり、周囲からの赤外線を反射する影響も受けやすい対象です。

黒体テープや黒色塗装などを利用して基準面を作る方法や、 対象に適した波長方式の放射温度計を検討する方法があります。

液体や油、溶融物は測れますか?

表面が見えていれば測定できますが、 波立ち、泡、飛沫などによって測定が不安定になる場合があります。

できるだけ安定した位置から、 同じ条件で測定することが重要です。

食品や調理器具に使えますか?

鉄板、油、調理器具などの表面温度管理に利用できます。

食品内部の中心温度を確認する用途には、 接触式温度計など適切な測定方法を使用してください。

人の体温測定に使えますか?

産業用の放射温度計は、 医療用体温計とは用途が異なります。

医療・臨床用途では、 その用途に適合した医療機器を使用してください。

高温炉や危険な場所で使えますか?

高温炉や危険場所では、 使用環境に適合した専用モデルやアクセサリが必要になる場合があります。

防爆認証、耐熱条件、設置方法など、 使用する機器の仕様を確認してください。

Chapter 4

環境によって温度測定値は変わる

風・蒸気・煙・粉じんが多い環境では?

測定対象と放射温度計の間に蒸気、煙、粉じんなどがあると、 赤外線が吸収・散乱され、 測定誤差の原因になる場合があります。

できるだけ視界がクリアな位置を選び、 レンズや保護窓の状態も確認します。

強い日差しや炉の輻射熱がある場合は?

周囲の高温面から放射された赤外線が対象物に反射し、 測定値へ影響する場合があります。

測定角度を変更する、 遮光する、 背景に高温物を入れないなどの対策を検討します。

周囲温度やウォームアップは重要ですか?

放射温度計には機器ごとの使用温度範囲があります。 急激に温度環境が変わった場合には、 機器が環境になじんでから測定することが重要です。

レンズや保護窓の汚れ・結露は誤差になりますか?

汚れや結露によって赤外線が遮られると、 正しい測定ができなくなる場合があります。

取扱説明書に従って、 清掃や点検を行ってください。

Chapter 5

正しい温度が測れないときのチェックポイント

温度が合わないときは、 すぐに機器の故障を疑うのではなく、 測定条件を一つずつ確認します。

1. 視野に対象以外が入っていないか

測定スポット内に背景や周囲の物体が入ると、 その温度の影響を受ける場合があります。

2. 放射率が合っているか

材質や表面状態に合わない放射率設定は、 測定誤差の大きな要因になります。

3. 反射の影響がないか

鏡面金属などでは、 周囲の熱源が反射して測定値へ影響する場合があります。

4. 蒸気・粉じん・煙がないか

測定対象と機器の間にある物質が、 赤外線の伝達を妨げていないか確認します。

5. レンズが汚れていないか

集光レンズや保護窓の汚れは、 測定誤差の原因になります。

放射率、視野、外乱、レンズの汚れなどは、 放射温度計で正しく測定するために確認したい代表的なポイントです。

正しい温度が計測できないときのFAQを見る

Chapter 6

放射温度計の点検・校正

放射温度計を点検する方法はありますか?

日常的な確認では、 安定した基準温度との比較が役立ちます。

チノーのFAQでは、 氷水を利用した簡易的な指示確認方法も紹介しています。

放射温度計の点検方法を見る

黒体テープを使った確認とは?

放射率が分かっている黒体テープや塗料などを基準面として使用し、 放射温度計の設定や測定状態を確認する方法です。

日常点検として利用する場合も、 使用するテープ・塗料の仕様や測定条件を確認してください。

放射温度計の校正周期はどう決めますか?

校正周期は一律の年数で決めるのではなく、 使用頻度、使用環境、要求精度、 過去の校正結果、測定値がずれた場合の影響などから検討します。

校正周期の決め方を見る

黒体(基準放射源)とは?

放射温度計の校正では、 温度が分かっていて放射率の高い面を持つ 黒体炉などの基準放射源を利用して比較する方法があります。

JCSS校正と一般校正、チノー校正はどう違いますか?

JCSS校正は、計量法に基づくJCSSの制度のもとで 登録・認定された範囲で行う校正です。

一般校正はJCSSの枠組みによらない校正を指す一般的な呼び方で、 チノーでは当社基準による「チノー校正」を提供しています。

JCSS校正と一般校正、チノー校正の違いを見る

Chapter 7

安全・規格について知っておきたいこと

レーザーの安全性はどう考えますか?

レーザー照準付き放射温度計は、 モデルによってレーザーのクラスや仕様が異なります。

目に直接照射しない、 鏡面へ向けないなど、 使用機器の取扱説明書に記載された安全上の注意を守ってください。

レーザー製品には、 IEC 60825-1やJIS C 6802などの規格が関連します。

医療用途で使用できますか?

産業用放射温度計と医療用体温計は、 使用目的や要求される規格が異なります。

臨床的な体温評価には、 用途に適合した医療機器を使用してください。

防水・防塵や耐落下性能はどこを見ればよいですか?

IP等級や耐落下性能などは、 製品仕様で確認します。

IP等級はIEC 60529に基づく保護等級です。

Chapter 8

放射温度計の選び方

放射温度計は、 「何℃まで測れるか」だけで選ぶと、 実際の現場では測定条件が合わないことがあります。 測定対象、距離、材質、環境、必要なデータまで含めて選定します。

選定項目 確認すること
測定対象 金属、樹脂、食品、液体、ガラス、高温物など
測定温度範囲 実際に測定する温度が機器の測定範囲に収まるか
必要精度 工程管理、品質保証、参考測定など用途に必要な精度
D:S比・測定距離 対象の大きさと機器までの距離で十分な視野を確保できるか
放射率 対象物の放射率設定が可能か、 表面状態の影響を受けないか
波長 金属など対象によって適した波長方式があるか
固定・携帯 現場点検か、設備への固定設置か
記録・通信 データ保存、外部出力、PC・スマートフォン連携の要否
特殊環境 高温、粉じん、蒸気、防爆などに対応できるか

選定で迷ったら

チノーでは、携帯形から設置形、 一般用途から高温・高速・二色形まで、 用途に応じた放射温度計を展開しています。

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Quick reference

迷ったときのチェックリスト

  • 何の温度を測るのか
  • 表面温度でよいのか
  • 対象物の材質と放射率は分かっているか
  • 対象物の大きさと測定距離は適切か
  • 反射する高温物が周囲にないか
  • 蒸気・煙・粉じんが測定経路にないか
  • 必要な温度範囲・精度を満たしているか
  • 固定式・携帯式のどちらが適しているか
  • 記録・通信が必要か
  • 校正や証明書が必要か

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測定対象、温度範囲、測定距離、材質、 使用環境、記録・通信の要否などから、 用途に合った放射温度計をご検討いただけます。

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