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サイリスタレギュレータは何をする機器?

まず、「サイリスタレギュレータ」という名前を覚える必要はありません。 温度制御の流れを見ると、その役割が分かります。

サイリスタレギュレータは、 ヒータなど電力を使って動作する機器へ供給する 電力を調整する機器です。 このような電力を受け取る側の機器を、 制御の分野では「負荷」と呼びます。 温度制御では、ヒータが代表的な負荷です。

機器 主な役割
温度センサ 現在の温度を測る
温度調節計 目標温度と現在温度を見て、必要な操作量を決める
サイリスタレギュレータ 操作信号に応じてヒータへ供給する電力を調整する
ヒータ 電力を熱へ変える

温度制御の「操作側」を担う

温度調節計が「どのくらい加熱するか」を決め、 サイリスタレギュレータがその指示を ヒータへの電力として実現すると考えると分かりやすくなります。

たとえば、温度調節計が現在の温度を見て 「もっと加熱する必要がある」と判断した場合、 サイリスタレギュレータはその操作信号に応じて ヒータへ供給する電力を増やします。

反対に、温度が設定値へ近づけば、 温度調節計からの操作信号に応じて ヒータへの電力を小さくします。

つまりサイリスタレギュレータは、 温度そのものを測る機器でも、 PID演算を行って操作量を決める機器でもありません。 温度制御ループの中で、 実際にヒータへ与える電力を調整する役割を担います。

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サイリスタとは?

サイリスタは、交流回路で使用される半導体スイッチです。

「半導体スイッチ」とは、 電気信号によって電気を流したり止めたりする 電子部品のことです。

サイリスタには「ゲート」と呼ばれる端子があり、 ここに小さな電流を流すことで、 ヒータなどへ流れる大きな電流を制御できます。

なぜ交流で使いやすい?

サイリスタには、一度ONになると、 流れている電流が一定値以下になるまで ON状態を保つ性質があります。

交流では、電流の向きが周期的に変化し、 その途中で電流がゼロになる瞬間があります。 サイリスタは、この交流の性質を利用して ONとOFFを制御できます。

サイリスタレギュレータでは、 サイリスタをONするタイミングなどを変えることで、 交流電源からヒータへ供給する電力を調整します。

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ヒータへの電力はどうやって調整する?

サイリスタレギュレータでは、 交流電源の電力をそのままヒータへ流し続けるのではなく、 サイリスタを動作させるタイミングを変えることで ヒータへの供給電力を調整します。

代表的な方法が、 「位相制御」と「分周制御」です。

どちらもサイリスタを利用して電力を調整しますが、 「交流の波をどのように使うか」が異なります。

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位相制御とは?

家庭や工場で使われている交流の電圧は、 一定ではなく、波のように周期的に変化しています。

この交流の波の「どの位置にあるか」を表す考え方を 「位相」と呼びます。

位相制御では、 交流の波のどのタイミングでサイリスタをONするかを変えます。

ONするタイミングが早ければ、 一周期の中でヒータへ電力を供給する時間が長くなります。 ONするタイミングを遅くすれば、 ヒータへ供給する電力を小さくできます。

このONするタイミングを角度で表したものを 「制御角」と呼びます。

位相制御の特徴

位相制御は、 交流の一周期の中で通電する範囲を変えられるため、 出力を細かく調整しやすいことが特徴です。

また、さまざまな電気的特性を持つヒータに 対応しやすい方式です。

一方で、交流の波を途中から使うため、 出力波形は電源そのもののきれいな波形とは異なります。

その結果、高調波や高周波領域のノイズが発生し、 周辺の電力設備や計測機器などへ影響する場合があります。

「高調波」とは、電源の基本となる周波数の 整数倍の周波数成分です。 位相制御のように波形が歪むと発生し、 電源設備などへ影響する場合があります。

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分周制御とは?

分周制御は、 電源電圧がゼロになるタイミングで サイリスタをON/OFFする方式です。

位相制御のように交流の波の途中から通電するのではなく、 電源の周期を一つの単位として、 通電する周期と通電しない周期の割合を変えます。

たとえば、 5周期のうち4周期をON、1周期をOFFにする場合と、 5周期のうち1周期だけONにする場合では、 ヒータへ供給される平均的な電力が変わります。

ONしている間は、 電源の波形を途中で切り取らずに使用します。

分周制御の特徴

分周制御は、位相制御と比較して、 高い周波数のノイズを小さくしやすいことが特徴です。

ただし、 「分周制御ならノイズが発生しない」 という意味ではありません。 電気をON/OFFする以上、程度の差はあってもノイズは発生します。

また、ONしたときには電源電圧がそのままヒータへ加わるため、 温度によって抵抗値が大きく変化するヒータなどでは 大きな電流が流れる場合があります。

条件によっては、 フリッカーと呼ばれる照明のちらつきなど、 電源側への影響も考慮する必要があります。

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位相制御と分周制御の違い

項目 位相制御 分周制御
電力の調整方法 交流の波の途中でONするタイミングを変える 電源の周期単位でON/OFFする
出力波形 電源波形を途中から使用するため歪む ON中は電源波形をそのまま使用する
出力調整 細かく調整しやすい 通電する周期の割合で調整する
適用する負荷 比較的幅広い ヒータの電気的特性による制約がある
主な注意点 高調波、高周波ノイズなど 大電流、フリッカーなど

位相制御と分周制御は、 どちらか一方が常に優れているわけではありません。 ヒータの特性、必要な制御方法、 電源や周辺設備への影響などを合わせて考えます。

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サイリスタレギュレータとSSRは何が違う?

ヒータを電気的に操作する機器には、 サイリスタレギュレータだけでなく SSR(ソリッドステートリレー)もあります。

そもそもリレーとは?

リレーとは、 電気信号によって別の電気回路を ON/OFFするためのスイッチです。

機械式リレーでは、 内部の接点を物理的に動かして 電気を流したり止めたりします。

一方、SSRは機械的な接点を使わず、 半導体によって電気的にON/OFFします。

SSRはON/OFF、サイリスタレギュレータは電力調整

SSRは、基本的には電気を通すか止めるかを切り替える 半導体スイッチとして使います。

温度制御では、 温度調節計からの信号によってSSRのON/OFFを繰り返し、 ヒータへ通電する時間の割合を変えることで 加熱量を調整する方法があります。

サイリスタレギュレータでは、 位相制御や分周制御などによって、 ヒータへ供給する電力を調整します。

項目 SSR サイリスタレギュレータ
基本的な役割 半導体によるON/OFF ヒータなどへの供給電力を調整
温度制御での使い方 ON/OFFする時間の割合を変える 位相制御や分周制御などを利用する
電力制御の考え方 通電する・しないを切り替える 負荷の特性に合わせて電力の与え方を調整する
フィードバック機能 一般的なSSRでは持たない 電圧・電流・電力などを確認して制御する方式がある

ただし、 SSRが簡易版でサイリスタレギュレータが上位機器、 という単純な関係ではありません。

必要な制御方法、ヒータの特性、 必要な電力や電流などに合わせて選択します。

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なぜヒータによって選び方が変わる?

サイリスタレギュレータを選ぶとき、 特に重要なのがヒータの電気的な特性です。

電気ヒータは、 電気が流れにくい性質である「電気抵抗」を利用して 電力を熱へ変換しています。

ところが、その抵抗値が温度によって どの程度変化するかは、 ヒータの種類によって大きく異なります。

つまり、 同じ電圧を加えても、 ヒータの種類や温度によって 流れる電流や発生する熱が変わる場合があります。

ニクロム系・鉄クロム系

ニクロム系や鉄クロム系のヒータは、 温度が変化しても抵抗値が比較的変化しにくい特性を持っています。

このようなヒータでは、 電圧を基準にした制御や、 フィードバックを使わない制御、 分周制御などを利用できます。

SiC系

SiC(炭化ケイ素)系ヒータは、 温度によって抵抗値が変化するだけでなく、 使用時間によっても抵抗値が変化する特徴があります。

そのため、同じ電圧を与えていても、 ヒータの状態によって流れる電流や 発生する熱量が変化します。

このような場合には、 電圧だけを見るのではなく、 実際にヒータへ供給している電力を確認しながら 制御する方法があります。

二硅化モリブデン・純金属系

二硅化モリブデンや純金属系のヒータでは、 温度によって抵抗値が大きく変化します。

特に低温時には抵抗値が小さいため、 大きな電圧をそのまま加えると 大きな電流が流れる場合があります。

このようなヒータでは、 実際に流れている電流を確認しながら 出力を調整する方法が利用されます。

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電圧・電流・電力フィードバックとは?

ここで「フィードバック」という言葉が出てきます。

フィードバックとは、 実際の状態を測定し、 その結果を使って出力を調整することです。

サイリスタレギュレータでは、 実際にヒータへ出ている電圧、 流れている電流、 使用している電力などを確認しながら 出力を調整する方式があります。

これは、温度調節計が温度を見ながら行う PID制御とは別のフィードバックです。

電圧フィードバック

実際にヒータへ出ている電圧を測定し、 その電圧が目標に近づくように サイリスタレギュレータの出力を調整します。

たとえば電源電圧が変化した場合でも、 実際の出力電圧を確認しながら補正できます。

電流フィードバック

実際にヒータへ流れている電流を測定し、 その電流を基準に出力を調整します。

大きな電流を測定するために、 CT(変流器)と呼ばれる機器を使うことがあります。

温度によって抵抗値が大きく変化するヒータでは、 低温時に大きな電流が流れる場合があります。

このような場合に、 実際の電流を確認しながら出力を調整することで、 過大な電流を抑えることができます。

電力フィードバック

電力フィードバックでは、 電圧と電流の両方を測定します。

電力は、基本的に 「電圧 × 電流」で考えることができます。

実際にヒータへ供給している電力を求め、 その電力が目標に近づくように出力を調整します。

抵抗値が変化するヒータでは、 同じ電力を供給する場合でも、 必要な電圧と電流の組み合わせが変わります。

そのため、電圧だけではなく、 電力そのものを基準にして制御する方法があります。

フィードバックなし

実際の電圧・電流・電力を サイリスタレギュレータ内部で確認せず、 入力された操作信号に応じて 出力を調整する方式もあります。

フィードバック機能が多いほど 常に優れているというわけではありません。 ヒータの特性や必要な制御方法に合わせて選択します。

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ヒータとフィードバック方式をどう組み合わせる?

ヒータの抵抗値が温度や使用時間によって どのように変化するかを見ると、 フィードバック方式を選ぶ理由が分かります。

ヒータの特徴 代表例 基本的な制御の考え方
温度による抵抗値の変化が比較的小さい ニクロム系、鉄クロム系 電圧フィードバック、フィードバックなし、分周制御など
使用に伴って抵抗値が変化する SiC系 電力フィードバックなど
温度による抵抗値の変化が大きい 二硅化モリブデン系、純金属系 電流フィードバックなど

この表は基本的な考え方を示したものです。 同じ種類や商品名のヒータでも、 メーカーや製法によって特性が異なる場合があります。 実際の選定では、使用するヒータの仕様や 抵抗-温度特性を確認してください。

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サイリスタレギュレータを選ぶとき、何を確認する?

サイリスタレギュレータを選ぶときは、 最初にサイリスタレギュレータの型式を見るのではなく、 まずヒータと電源の条件を確認します。

HEATER

ヒータの種類・特性

材質、必要な電圧・電力、 抵抗値、温度による抵抗値の変化などを確認します。

POWER

電源

何Vの電源を使用するのか、 単相か三相かを確認します。

CURRENT

必要な電流

ヒータへどの程度の電流が流れるのかを確認し、 サイリスタレギュレータがその電流を扱えるか確認します。

CONTROL

制御方式

ヒータの特性などから、 位相制御と分周制御のどちらが適しているかを検討します。

FEEDBACK

フィードバック方式

電圧、電流、電力のどれを確認しながら 制御する必要があるかを検討します。

SIGNAL

温度調節計との組み合わせ

温度調節計からどのような操作信号を 受け取るのかを確認します。

このように、 「サイリスタレギュレータの容量を先に決める」のではなく、 ヒータに必要な電圧・電力・電流と、 ヒータの電気的な特性から順番に考えることが重要です。

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サイリスタレギュレータにはどんな機能がある?

サイリスタレギュレータには、 電力を調整するだけでなく、 ヒータや設備を適切に使用するための機能があります。

実際に搭載される機能は機種によって異なりますが、 代表的な考え方を紹介します。

電流制限

ヒータへ流れる電流が 設定した値を超えないように 出力を制限する機能です。

温度によって抵抗値が大きく変化し、 低温時に大きな電流が流れるヒータなどで重要になります。

ソフトスタート

運転開始時に出力を一気に大きくせず、 徐々に増加させる機能です。

常温時の抵抗値が小さいヒータでは、 運転開始直後に大きな電流が流れる場合があります。 出力を徐々に増やすことで、 このような急激な電流を抑えることができます。

また、ヒータへ急激に熱を加えることによる 熱的な負担を小さくする目的でも使われます。

ヒータ断線警報

ヒータの電圧や電流などから状態を確認し、 ヒータの断線や異常を検出する機能を備えた機種もあります。

検出方法や利用できる条件は機種によって異なります。

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サイリスタの出力を測るときの注意

サイリスタレギュレータを初めて扱うときに 注意したいのが、出力電圧や電流の測定です。

特に位相制御では、 出力波形が電源のようなきれいな正弦波ではなく、 途中が切り取られた歪んだ波形になります。

そのため、一般的な測定器では 正しい電圧や電流を表示できない場合があります。

位相制御された出力を測定する場合には、 真の実効値型(True RMS)など、 歪んだ波形を適切に測定できる測定器を使用します。

「測ってみたら想定より電圧が低い」という場合には、 すぐにサイリスタレギュレータの故障を疑うのではなく、 どのような波形を、 どのような測定器で測定しているのかも確認します。

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サイリスタレギュレータを使えば温度制御は安定する?

サイリスタレギュレータは、 ヒータへの電力を調整する重要な機器です。

しかし、サイリスタレギュレータを使用すれば、 それだけで温度制御が安定するわけではありません。

温度制御は、 一つの機器ではなく 制御ループ全体として考える必要があります。

段階 役割
温度センサ 制御対象の温度を測定する
温度調節計・PID 測定値と設定値から必要な操作量を決める
サイリスタレギュレータ 操作信号に応じてヒータへの電力を調整する
ヒータ 電力を熱へ変換する
制御対象 実際に温度が変化する対象

温度センサの測定位置、 PID設定、ヒータの能力、 サイリスタレギュレータの方式、 制御対象の熱容量、応答の遅れ、 外部から加わる温度変化など、 さまざまな要因が温度制御へ影響します。

そのため、温度制御に問題がある場合には、 サイリスタレギュレータだけを疑うのではなく、 制御ループ全体から原因を考えることが重要です。

CHINO

CHINOのサイリスタレギュレータ

CHINOでは、温度調節計などと組み合わせて使用する サイリスタレギュレータを展開しています。

製品によって、 対応する電源電圧や電流、 単相・三相、 位相制御・分周制御、 フィードバック方式、 保護・警報機能などが異なります。

本記事では個別製品の仕様を詳しく紹介するのではなく、 サイリスタレギュレータの仕組みと 選定の考え方を理解することを目的としています。

実際の製品選定では、 使用するヒータや設備の条件を確認したうえで、 各製品の仕様を確認してください。

FAQ

よくある質問

サイリスタレギュレータとは何ですか?

サイリスタを利用して、 ヒータなどへ供給する電力を調整する機器です。 温度制御では、温度調節計などから操作信号を受けて ヒータへの電力を制御します。

サイリスタとサイリスタレギュレータは何が違いますか?

サイリスタは電力を制御するための半導体素子です。 サイリスタレギュレータは、 そのサイリスタを利用して ヒータなどへの電力を制御する機器です。

SSRとサイリスタレギュレータは何が違いますか?

SSRは半導体を利用して電気回路をON/OFFする機器です。 サイリスタレギュレータは、 位相制御や分周制御などによって ヒータへ供給する電力を調整します。

位相制御と分周制御はどちらが優れていますか?

どちらかが常に優れているわけではありません。 ヒータの特性、必要な制御方法、 電源や周辺設備への影響などを考えて選択します。

ヒータによってサイリスタレギュレータを変える必要がありますか?

ヒータの抵抗値が温度によってどのように変化するかによって、 適した制御方式やフィードバック方式が異なります。 実際のヒータ仕様や抵抗-温度特性を確認することが重要です。

電圧・電流・電力フィードバックとは何ですか?

実際にヒータへ出ている電圧、 流れている電流、 使用している電力などを測定し、 その結果を使って出力を調整する方式です。 どの方式を使うかは、ヒータの特性などによって変わります。

サイリスタの出力を普通のテスタで測れますか?

位相制御では出力波形が歪んでいるため、 一般的な測定器では正しく測定できない場合があります。 真の実効値型(True RMS)など、 歪んだ波形を適切に測定できる測定器を使用します。

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