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PID制御とは何か
PID制御は、設定値と測定値との差をもとに 操作量を調整するフィードバック制御の一つです。
温度制御を例にすると、設定温度が200℃なのに 現在の温度が180℃なら、温度を上げるための操作が必要です。 その後、190℃、195℃と設定値へ近づいてきたら、 温度が上がりすぎないように操作量を変える必要があります。
PID制御では、このような制御対象の状態を継続的に確認しながら、 目標値へ近づけるための操作量を決めます。
SV・PV・偏差・MVの関係
| 用語 | 意味 | 温度制御の例 |
|---|---|---|
| SV | 設定値・目標値 | 200℃ |
| PV | 測定値・現在値 | 180℃ |
| 偏差 | SVとPVとの差 | 20℃ |
| MV | 操作量 | ヒータへの出力 |
SVが200℃、PVが180℃なら、 現在の温度は目標より20℃低い状態です。 PID制御では、この偏差を利用してMVを決めます。
ただし、現在の偏差だけを見るのではありません。 偏差がどの程度続いているのか、 偏差がどのように変化しているのかも利用します。 この違いがP・I・Dそれぞれの役割につながります。
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なぜPID制御を使うのか
温度を目標値へ近づけるだけなら、 PID制御以外にも方法があります。 PID制御が必要になる理由を理解するには、 より単純な制御から考えると分かりやすくなります。
ON/OFF制御では温度が上下しやすい
最も単純なのは、ヒータをONまたはOFFにする方法です。 設定温度より低ければヒータをON、 高ければOFFにするという考え方です。
しかし、ヒータをOFFにした瞬間に 加熱の影響がなくなるわけではありません。 ヒータや対象物には熱が残っているため、 OFFにした後も温度が上昇することがあります。
反対に、温度が下がってヒータをONにしても、 すぐに温度が上昇するとは限りません。 そのため、設定値の周囲で温度が上下することがあります。
P制御では偏差に応じて操作量を変えられる
P制御では、ONかOFFかだけではなく、 目標値との偏差に応じて操作量を変化させます。
設定値から大きく離れていれば大きく操作し、 設定値へ近づけば操作を小さくするという考え方です。
一方、P動作だけでは、制御が安定した後も 設定値と測定値との間に差が残る場合があります。 この定常的に残る差を「オフセット」と呼びます。
P・I・Dを組み合わせて制御する
そこで、P動作にI動作やD動作を組み合わせます。 I動作は継続する偏差を小さくする方向に働き、 D動作は偏差の変化を考慮します。
P・I・Dの働きを組み合わせることで、 単に目標値へ近づけるだけでなく、 設定値付近での安定性なども考慮した制御ができます。
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P動作とは
PはProportional(比例)を表します。 P動作は、現在の偏差に応じて操作量を変化させる動作です。
設定値と測定値との差が大きければ操作量を大きくし、 差が小さくなれば操作量も小さくします。
比例帯とは
温度調節計では、P動作の設定に 「比例帯」が使われることがあります。 比例帯とは、操作量を比例的に変化させる範囲を表すパラメータです。
比例帯が小さくなると、 同じ偏差に対する操作量の変化が大きくなります。 反対に比例帯を大きくすると、操作量の変化は緩やかになります。
比例帯を小さくすれば必ず制御が良くなるわけではありません。 制御対象に対してP動作が強すぎれば、 設定値付近での変動が大きくなることがあります。
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I動作とは
IはIntegral(積分)を表します。 I動作は、偏差が時間とともにどの程度積み重なっているかを 考慮して操作量を変化させます。
たとえば、設定温度が200℃なのに198℃で安定しているとします。 現在の偏差は2℃しかありません。 しかし、この2℃の偏差が長時間続いているのであれば、 小さな偏差が残り続けていることになります。
I動作では、このような偏差の積み重なりを考慮して 操作量を変化させます。 そのため、P動作だけでは残ることがあるオフセットを 小さくするために利用されます。
積分時間とは
I動作に関係する代表的なパラメータが「積分時間」です。 積分時間によって、継続する偏差に対して I動作がどの程度の速さで影響するかが変わります。
I動作を強くすれば常に良いわけではありません。 制御対象に対して影響が強すぎれば、 操作量の修正が大きくなり、 制御が不安定になることがあります。
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D動作とは
DはDerivative(微分)を表します。 D動作は、偏差がどのように変化しているかを考慮して 操作量を変化させます。
たとえば設定温度が200℃で、 現在温度が190℃だとします。 現在の温度だけを見れば、まだ10℃低いため加熱が必要です。
しかし、温度が非常に速く上昇している場合、 そのまま大きな操作を続ければ設定温度を超えることがあります。 D動作では、このような変化を考慮して操作量を調整します。
そのため、急激な変化を抑える方向に働くことがあります。
微分時間とは
D動作に関係する代表的なパラメータが「微分時間」です。 微分時間によって、変化に対するD動作の影響が変わります。
実際の設定では、制御対象の特性や P・Iとの組み合わせを考える必要があります。
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P・I・Dを組み合わせるとどうなるのか
P・I・Dは、それぞれ異なる情報を利用します。
| 動作 | 主に見るもの | 基本的な役割 |
|---|---|---|
| P | 現在の偏差 | 偏差に応じて操作する |
| I | 偏差の積み重なり | 継続する偏差を小さくする |
| D | 偏差の変化 | 急激な変化を考慮する |
簡単に整理すると、 Pは現在の偏差、Iは偏差の積み重なり、 Dは偏差の変化を見るという違いがあります。
PID制御では、それぞれの動作による結果を組み合わせて 最終的な操作量を決めます。 異なる役割を持つ3つの動作を組み合わせていることが PID制御の特徴です。
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PID定数とは
PID制御では、P・I・Dそれぞれの働きを 制御対象に合わせて設定します。 温度調節計では、比例帯、積分時間、微分時間などが PID定数として使われます。
PID定数には、すべての設備に共通する 「正解の値」があるわけではありません。
同じ200℃を制御する設備でも、 小さな加熱槽、大型の加熱炉、空気や液体を加熱する設備などでは、 温度の変化の仕方が異なります。
PID定数は制御対象の特性によって変わる
適切なPID定数には、制御対象の熱容量、 温度が変化する速さ、むだ時間、ヒータなどの能力、 センサの位置、負荷変動、外乱などが関係します。
そのため、別の設備でうまく制御できたPID定数を そのまま別の設備へ設定しても、 同じ結果になるとは限りません。
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PID定数を変えると制御応答はどう変わるのか
PID定数を変更すると、 温度が目標値へ近づく過程も変化します。 時間に対する温度の変化を見ることで、 現在の制御状態を評価できます。
立ち上がり
制御開始後、PVがSV付近へ近づいていく過程です。
オーバーシュート
PVがSVを一時的に超える現象です。
ハンチング
PVがSVの周辺で周期的に上下し続ける状態です。
整定時間
制御を開始してから、 PVがSV付近の安定した状態へ落ち着くまでの時間です。
オフセット
制御が安定した後も、 SVとPVとの間に残る定常的な差です。
こうした制御応答を見ることで、 何を改善したいのかを整理できます。 ここから先は「PIDとは何か」ではなく、 「PIDをどう調整するか」という実務になります。
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オートチューニングとは
PID定数は、人が制御応答を確認しながら調整する方法だけでなく、 調節計などの機能を使って自動的に求める方法もあります。 この機能がオートチューニング(AT)です。
オートチューニングでは、制御対象の応答を利用して PID定数を求めます。
オートチューニングで求めたPID定数が、 あらゆる運転条件で最適とは限りません。 負荷や設定温度、運転条件などが変われば、 制御応答も変化することがあります。
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PIDを調整しても解決しない場合
温度が安定しないと、 PID定数を変更すれば改善すると考えがちです。 しかし、PID制御は制御ループの一部分です。
センサは正しく測れているか
温度センサの種類、設置位置、挿入深さなどが適切でなければ、 制御したい対象の温度を正しく捉えられていない場合があります。
ヒータや操作機器は必要な操作を実現できるか
必要な熱量に対してヒータ能力が不足していれば、 PID定数を調整しても十分な速度で温度を上げることはできません。 また、調節計が求めたMVを実際のヒータ電力などへ反映する 操作機器も制御結果に関係します。
熱容量やむだ時間が大きくないか
設備や対象物の熱容量が大きければ、 操作してから温度が変化するまで時間がかかります。 ヒータとセンサが離れている場合などでは、 操作の影響をセンサが捉えるまでにも時間がかかります。
外乱や負荷変動が大きくないか
扉の開閉、材料の投入、流量の変化、 周囲温度の変化などもPVへ影響します。 制御対象の条件そのものが大きく変化している場合、 一定のPID定数だけで常に同じ応答を得ることは難しくなります。
PID調整では、PID定数を見る前に 制御ループ全体を見ることが重要です。
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PID以外の制御を考える
設備の特性によっては、 単一のPID制御だけでは目的とする応答を 得にくい場合があります。
カスケード制御
カスケード制御では、複数の制御ループを組み合わせます。 ヒータと実際に制御したい場所が離れている場合などに 利用されることがあります。
カスケード制御とは?2つの制御ループで温度を安定させる仕組み
フィードフォワード制御
材料投入や流量変化などの外乱を捉え、 その影響が制御結果に現れる前に操作する考え方です。 PID制御と排他的なものではなく、 目的に応じて組み合わせることがあります。
Z制御
CHINOでは、温度制御に対する独自の取り組みとして 「Z制御」を開発しています。 Z制御はザゼンソウの発熱・温度調節に関する研究を背景として 生まれた温度制御技術です。
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PID制御を理解したら次に知りたいこと
PID TUNING
PID調整とは?温度制御の波形から考えるチューニングの基本
制御応答を見ながら、 P・I・Dをどう考えて調整するのかを解説します。
AUTO TUNING
オートチューニングとは?PID定数を自動調整する仕組みと注意点
PID定数を自動的に求める仕組みと、 実施時に確認したいポイントを解説します。
POWER CONTROL
サイリスタレギュレータとは?ヒータの電力を制御する仕組み
調節計が決めた操作量を、 実際のヒータ電力へ反映する仕組みを解説します。
CASCADE CONTROL
カスケード制御とは?2つの制御ループで温度を安定させる仕組み
単一のPID制御では安定させにくい対象で、 複数の制御ループを組み合わせる考え方を解説します。
CHINO TECHNOLOGY
Z制御とは?ザゼンソウ研究から生まれたチノー独自の温度制御技術
CHINO独自の温度制御技術について、 その背景とPID制御との違いを解説します。
CONTROL BASICS
制御とは?目標値に近づけ、安定した状態を保つための考え方
PIDだけでなく、 フィードバックや温度制御全体の基本から確認できます。
FAQ
よくある質問
PID制御とは何ですか?
PID制御とは、目標値と測定値との差をもとに、 P(比例)、I(積分)、D(微分)の3つの働きを組み合わせて 操作量を調整するフィードバック制御です。
P・I・Dは何が違いますか?
Pは現在の偏差、Iは偏差の積み重なり、 Dは偏差の変化を考慮します。 それぞれ異なる役割を組み合わせて操作量を決めます。
PID定数に標準的な値はありますか?
すべての設備に共通する正解のPID定数はありません。 熱容量、応答速度、むだ時間、ヒータ能力、外乱などが異なるため、 適切なPID定数も制御対象によって変わります。
PIDを調整しても温度が安定しないのはなぜですか?
PID定数以外にも、センサの設置、ヒータ能力、 操作機器、熱容量、むだ時間、外乱などが原因になることがあります。 PIDだけでなく制御ループ全体を確認することが重要です。
オートチューニングを使えばPID調整は不要ですか?
オートチューニングによってPID定数を求めることはできますが、 その値がすべての運転条件で最適とは限りません。 実際の運転条件で制御応答を確認する必要があります。