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カスケード制御とは?
まず、一般的な温度制御を考えてみます。
温度センサで現在の温度を測り、 温度調節計が設定温度との差を見ながら、 ヒータなどをどの程度操作するかを決めます。
| 流れ | 役割 |
|---|---|
| 1 | 温度センサが現在の温度を測る |
| 2 | 温度調節計が設定温度との差を確認する |
| 3 | ヒータなどへの操作量を決める |
| 4 | 温度が変化する |
| 5 | 変化した温度を再び測定する |
このように、測定した結果を使って次の操作を決める仕組みを フィードバック制御と呼びます。
PID制御も、フィードバック制御で広く使われる方法の一つです。
カスケード制御では、 この制御ループをもう一つ組み合わせます。
カスケード制御の本質は、 「調節計を2台使うこと」ではなく、 2つの制御ループをつないで使うことです。
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なぜ1つのPID制御では難しいことがある?
カスケード制御を理解するには、 「なぜ制御ループを2つにする必要があるのか」を 考えると分かりやすくなります。
ヒータと温度センサが離れている
例えば大型の炉では、 ヒータが炉壁付近にあり、 本当に温度を安定させたい炉内や製品とは 離れていることがあります。
ヒータへ電力を与えても、 その熱が制御したい場所まで伝わるには時間がかかります。
「まだ温度が低い」と判断して加熱を続ける
温度調節計が最終的な温度センサの値だけを見ていると、 ヒータを強く加熱しても測定値がすぐには上がらないため、 「まだ設定温度より低い」と判断します。
そのため、さらに加熱を続けます。
しかし、その間にもヒータ側には熱が蓄えられています。
遅れて届く熱がオーバーシュートにつながる
やがて蓄えられた熱が制御したい場所へ伝わると、 温度が設定値を超えてしまうことがあります。
加熱した結果が見えるまで時間がかかる ことが、制御を難しくするポイントです。
設定値を超えたため出力を下げても、 今度はすぐに温度が下がらない場合があります。
このように、操作してから結果が現れるまでの時間が長い設備では、 オーバーシュートやハンチングなどが起こりやすくなります。
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カスケード制御では何を変える?
そこでカスケード制御では、 最終的に制御したい温度だけでなく、 その手前にあるヒータ側などの状態も測定します。
例えば、炉内温度を一定にしたい設備で、 ヒータ温度も測定する場合を考えます。
| 制御する場所 | 見る値 | 役割 |
|---|---|---|
| 1次側 | 炉内温度 | 最終的に安定させたい温度を見る |
| 2次側 | ヒータ側の温度 | 実際の加熱操作に近い温度を見る |
1次側は炉内温度を見ながら、 「今、ヒータ側をどのくらいの温度にすればよいか」を決めます。
2次側は、その要求された温度になるように ヒータを操作します。
1次側が直接ヒータを操作するのではなく、 1次側が2次側の目標を決め、 2次側が実際の操作を行うところがポイントです。
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1次ループと2次ループとは?
カスケード制御では、 2つの制御ループを「1次ループ」と「2次ループ」と呼びます。
1次ループは「最終的に制御したい値」を扱う
1次ループでは、 最終的に安定させたい値を測定・制御します。
温度制御なら、 炉内温度、容器内温度、製品温度などが考えられます。
1次ループは「主ループ」と呼ばれることもあります。
2次ループは「操作側に近い値」を扱う
2次ループでは、 ヒータ温度など、 実際に操作する機器に近い値を測定・制御します。
2次ループは「副ループ」と呼ばれることもあります。
重要なのは、単に温度を2か所で測ることではありません。 2次側で測る値が、 1次側よりも早く変化を捉えられ、 そこを別に制御する意味があることが重要です。
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1次側と2次側はどうつながる?
カスケード制御では、 1次側と2次側がそれぞれ独立して動くわけではありません。
1次側が、 「2次側をどの値にすれば、最終的な温度を目標へ近づけられるか」 を決めます。
その値を、2次側の設定値として使います。
| 段階 | 動き |
|---|---|
| 1 | 1次側が最終的な温度を確認する |
| 2 | 1次側が必要な2次側の設定値を決める |
| 3 | 2次側がその設定値を受け取る |
| 4 | 2次側がヒータなどを操作する |
| 5 | 最終的な温度が変化する |
SV・PV・MVで表すとどうなる?
制御では、 設定値をSV、測定値をPV、操作量をMVと呼びます。
カスケード制御では一般に、 1次側で求めたMVを、 2次側のSVとして利用する構成があります。
つまり、 1次側の「操作したい量」が、 2次側にとっては「目標値」になります。
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なぜカスケード制御で安定しやすくなる?
カスケード制御の大きな特徴は、 最終的な温度へ影響が現れる前に、 2次側で変化を捉えられる構成を作れることです。
1つのループだけの場合
ヒータ側で変化が起きても、 その影響が炉内温度まで伝わり、 1次側の温度センサが検出するまで 調節計はその変化を把握できません。
2次ループがある場合
ヒータ側などに置いた2次側のセンサが その変化を先に捉えられる構成であれば、 2次側でより早く補正できます。
その結果、 最終的に制御したい温度への影響が 大きくなる前に対応できる場合があります。
カスケード制御が有効になるためには、 2次側が1次側よりも早く変化を捉え、 制御できる構成になっていることが重要です。
この条件を満たすことで、 応答遅れや外乱の影響を小さくし、 オーバーシュートやハンチングを抑えることにつながります。
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カスケード制御はどんな設備で使う?
カスケード制御は、 2つの制御ループに分ける意味がある設備で検討します。
ヒータと制御したい場所が離れている設備
大型炉などでは、 ヒータから制御したい場所まで熱が伝わるのに 時間がかかる場合があります。
このような場合には、 ヒータ側の温度を2次側で制御する構成が考えられます。
自己発熱などの外乱がある設備
化学反応などによって、 外部から加熱していなくても熱が発生する設備があります。
このような変化を2次側でより早く捉えられる構成であれば、 最終的な温度への影響を抑えるために カスケード制御を利用できる場合があります。
流量など別の値を操作して温度を変える設備
温度制御は、 ヒータを直接操作する場合だけではありません。
例えば冷却水の流量を変えることで 温度を調整する設備があります。
この場合には、 1次側で温度を制御し、 2次側で流量を制御する構成が考えられます。
熱が伝わるまでに時間がかかる炉
半導体製造装置など、 加熱部から実際の処理対象まで 熱が伝わるのに時間がかかる設備でも、 カスケード制御が検討される場合があります。
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カスケード制御なら何でも良くなる?
カスケード制御は、 制御ループを2つに増やせば 自動的に制御性能が向上する仕組みではありません。
特に重要なのが、 「2次側で何を測るか」です。
2次側で早く変化を捉えられるか
2次側で測る値が、 最終的な制御値よりも先に変化し、 その値を独立して制御できることが重要です。
2つの測定値がほぼ同じなら効果は小さい
1次側と2次側がほぼ同じタイミングで変化するのであれば、 制御ループを2つに分けるメリットは小さくなります。
単一PIDで十分なら複雑にする必要はない
1つのPID制御で目的とする応答が得られている場合には、 センサや制御ループを追加して システムを複雑にする必要はありません。
カスケード制御は 「PIDを2つ使えば高性能になる」という考え方ではなく、 制御対象の中にある、より速く変化する部分を 別のループで制御するための方法です。
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カスケード制御を構築する基本的な流れ
実際の端子接続や機種設定は使用する機器によって異なりますが、 カスケード制御を考える基本的な流れは整理できます。
1. 最終的に何を安定させたいか決める
まず、 本当に制御したい値を決めます。
例えば炉内温度、製品温度、容器内温度などです。 これが1次側の測定値になります。
2. 2次側で何を測るか決める
次に、 最終的な温度へ影響する前に 変化を捉えられる値を検討します。
ヒータ温度、ジャケット温度、流量などが候補になります。
3. 2次側だけで制御できる状態を作る
まず2次側のセンサと操作機器を使い、 2次側の値を設定値へ制御できる状態を作ります。
4. 1次側から2次側へ設定値を渡す
1次側で求めた操作量を、 2次側の設定値として利用できるようにします。
5. 2次側を調整する
内側にある2次ループが 安定して動作するように調整します。
6. 1次側を調整する
2次側が安定した状態を作った後、 最終的な制御値を扱う1次側を調整します。
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なぜ2次側から調整する?
カスケード制御では、 1次側の操作が2次側を通じて 最終的な制御対象へ伝わります。
そのため、 2次側が不安定な状態で1次側を調整すると、 どちらのPID設定が原因なのかを 判断しにくくなります。
基本的には、 内側にある2次ループを先に安定させ、 その後に1次ループを調整する という順番で考えます。
オートチューニングを利用する場合も、 使用する調節計の仕様や手順を確認したうえで、 2次側から1次側へ進めます。
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カスケード制御で注意したいこと
センサを2つ付ければよいわけではない
重要なのは、 それぞれのセンサで何を測るかです。
1次側では最終的に制御したい値を測り、 2次側では操作側に近く、 より早く変化を捉えられる値を測ります。
2次側の設定値は固定とは限らない
通常の温度制御では、 200℃などの設定値を固定して運転することがあります。
カスケード制御では、 2次側の設定値を1次側が変化させます。
つまり、 2次側は一定の目標値を追い続けるのではなく、 1次側から与えられる目標値に追従します。
2次側は1次側より速く応答できることが重要
2次側の応答が1次側と同じ程度、 またはそれより遅い場合には、 カスケード制御のメリットを得にくくなります。
2次側がより速く変化を捉え、 制御できる構成になっているかを確認します。
1次側から2次側へ値を渡せる構成が必要
2台の調節計を使う場合には、 1次側が求めた値を 2次側の設定値として受け取れる構成が必要です。
具体的な信号形式や設定方法は、 使用する調節計によって異なります。
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カスケード制御には調節計が2台必要?
カスケード制御の説明では、 1次調節計と2次調節計という 2台の機器を使った構成がよく使われます。
しかし、カスケード制御の本質は、 調節計を2台使うことではありません。
カスケード制御の本質は、 2つの制御ループを組み合わせることです。
そのため、 2台の調節計を組み合わせる方法のほか、 複数の制御機能を持つコントローラや 計装システムの中で2つのループを構成する方法もあります。
「調節計2台」は、 カスケード制御を実現する方法の一つと考えると分かりやすくなります。
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カスケード制御とPID制御の関係
カスケード制御とPID制御は、 どちらか一方を選ぶ関係ではありません。
PID制御は、 設定値と測定値などから 操作量を決める制御方法です。
カスケード制御は、 2つの制御ループをどのようにつなぐかという 制御構成の考え方です。
そのため、カスケード制御では、 1次ループと2次ループのそれぞれで PID制御を使う構成があります。
| 用語 | 何を表す? |
|---|---|
| PID制御 | 1つのループの中で、どのように操作量を決めるか |
| カスケード制御 | 2つの制御ループをどのようにつないで使うか |
More Detail
さらに詳しいカスケード制御技術
ここまで説明してきたのは、 カスケード制御の基本的な考え方です。
当社では、 2台の調節計を使った具体的な構築方法や、 特定の調節計で利用できるカスケード定数などについても 技術情報を公開しています。
実際の構築方法を見る
カスケード定数を詳しく見る
カスケード定数は、 一般的なカスケード制御そのものを表す用語ではなく、 対応する機器で使用する機能・設定です。 具体的な設定方法は対象機器の技術情報や取扱説明書を確認してください。
FAQ
よくある質問
カスケード制御とは何ですか?
カスケード制御とは、 2つの制御ループを組み合わせる制御方法です。 最終的に制御したい値を1次側で制御し、 その操作側に近い値を2次側で制御します。
PID制御とカスケード制御は何が違いますか?
PID制御は、 設定値と測定値などから操作量を決める制御方法です。 カスケード制御は、 2つの制御ループを組み合わせる構成の考え方です。 それぞれのループでPID制御を利用することがあります。
なぜ2つの制御ループを使うのですか?
最終的な制御値だけでは変化を捉えるのが遅い設備などで、 操作側に近い変化を2次側でより早く捉え、 制御するためです。
1次側と2次側は何が違いますか?
1次側は最終的に制御したい値を扱います。 2次側は操作側に近く、 より早く変化を捉えられる値を扱います。
なぜ2次側からPIDを調整するのですか?
1次側は2次側を通じて設備を操作するためです。 まず内側にある2次ループを安定させ、 その後に1次側を調整します。
カスケード制御にするとハンチングはなくなりますか?
必ずなくなるわけではありません。 2次側で適切に変化を捉えられる構成にすることや、 PID設定、センサ位置、設備特性なども重要です。
カスケード制御には調節計が2台必要ですか?
必ずしも必要ではありません。 2台の調節計を使う方法のほか、 複数の制御ループを構成できるコントローラや 計装システムを使う方法もあります。