Chapter 1
防爆環境で温度を測る前に知っておきたいこと
化学プラント、石油・ガス関連設備、半導体製造設備などでは、 可燃性ガスや蒸気などによって 爆発性雰囲気が形成される場合があります。
このような場所で電気機器を使用する場合は、 機器自体が着火源とならないよう、 使用環境に適した防爆構造の機器を選ぶことが重要です。
防爆機器の選定は、 温度計測機器だけで完結するものではありません。 実際に使用する場所の危険性、 必要な防爆仕様、 設置条件などを確認したうえで機器を選定します。
防爆機器については、 産業安全技術協会(TIIS) が防爆構造電気機械器具の検定に関する情報を公開しています。
Chapter 2
防爆環境と放射温度計の基礎知識
危険場所とは?
防爆機器の選定では、 可燃性ガスや蒸気などが存在する可能性のある 危険場所について確認する必要があります。
国内の防爆関連資料では、 IEC規格のZone 0、Zone 1、Zone 2に対応する 「特別危険箇所」「第1類危険箇所」「第2類危険箇所」 という区分が使われます。
| 区分 | 概要 |
|---|---|
| Zone 0 | 爆発性雰囲気が連続的、長時間または頻繁に存在する可能性がある場所。 |
| Zone 1 | 正常な運転状態でも、爆発性雰囲気がときどき生成する可能性がある場所。 |
| Zone 2 | 正常な運転状態では爆発性雰囲気が生成しにくく、 発生しても短時間だけ存在する場所。 |
※危険場所の分類は設備、物質、放出源、換気条件などに基づいて決定されます。 上記は一般的な理解のための説明であり、 実際の危険場所の判定は関連する規格・法令・設備条件に従ってください。
放射温度計が防爆環境で使われる理由
放射温度計は、対象物に触れずに表面温度を測定できます。 そのため、炉内や高温設備、 移動する製品など、 接触式温度センサを取り付けにくい対象の測定に利用できます。
非接触測定
対象物へセンサを直接接触させずに 表面温度を測定できます。
高温対象
加熱された設備や製品など、 接触式では測定しにくい対象の温度管理に利用できます。
連続監視
定点型の構成では、 工程中の温度を継続的に監視できます。
Chapter 3
耐圧防爆放射温度計の選定ポイント
防爆環境で使用する放射温度計は、 「耐圧防爆だから使える」と考えるのではなく、 使用場所と機器の仕様が適合しているかを確認することが重要です。
1. 防爆構造と使用条件
防爆構造には、 耐圧防爆、本質安全防爆など複数の方式があります。 TIISでは、防爆構造の規格として IEC 60079-1を耐圧防爆構造「d」、 IEC 60079-11を本質安全防爆構造「i」として整理しています。
どの防爆構造が適切かは、 危険場所、機器構成、対象となる防爆条件などによって決まります。
2. 認証・検定を確認する
国内で防爆機器を使用する場合は、 対象となる防爆機器の検定・認証条件を確認する必要があります。 製品の型式、表示、防爆記号、 検定・認証情報を確認したうえで選定してください。
防爆機器については、 「防爆対応」と書いてあるかだけを見るのではなく、 使用場所と製品に表示された防爆仕様・認証情報が合っているか を確認することが重要です。
3. 測定温度範囲
防爆性能だけでなく、 実際に測定したい対象温度をカバーしているか確認します。
- 常用温度
- 最低・最高温度
- 短時間だけ発生するピーク温度
- 温度変化の速さ
4. 測定距離と測定径
放射温度計では、 測定距離と測定径の関係も重要です。 測定対象より十分小さい測定領域で測れるか、 光軸のずれなどを含めて確認します。
5. 設置方法と保守性
防爆環境では、 温度計本体だけでなく、 測定窓、配線、ケーブル引き込み、 周辺部品を含めて設置条件を確認する必要があります。
チノーのIR-CZDシリーズでは、 シーリングウィンドウと組み合わせることで 測定窓のメンテナンス性を高める構成が用意されています。
Chapter 4
耐圧防爆放射温度計の特徴と用途
耐圧防爆形の放射温度計は、 爆発性雰囲気が存在する可能性のある環境で、 非接触で温度を測定したい場合に選択肢となります。
半導体関連設備
CVD装置など、 温度管理が重要な製造設備での 非接触温度測定に利用される場合があります。
化学プラント
反応設備やプロセスラインなど、 温度管理が工程条件に関係する設備で利用される場合があります。
石油・エネルギー関連設備
高温設備や加熱工程など、 非接触での温度監視が必要な設備で利用される場合があります。
防爆環境では、 用途だけでなく、 実際の危険場所、測定対象、 周辺設備、必要な防爆仕様を確認して 適合する機器を選定してください。
Chapter 5
現場導入のポイントと保守の重要性
設置場所を確認する
防爆性能を満たしていても、 測定場所や設置条件が適切でなければ、 正確な温度計測はできません。
- 測定距離と測定径
- 対象物の表面状態・放射率
- 測定窓の状態
- 周囲からの反射・輻射
- 周囲温度
- 振動・粉じん・水分などの環境条件
定期的な点検・清掃
放射温度計では、 レンズや測定窓の汚れが測定条件へ影響する場合があります。 使用環境に応じて清掃・点検の方法と頻度を決めておくことが重要です。
校正も計画する
品質管理や工程管理などで測定値を重要な判断材料として使用する場合は、 定期的に指示値を確認し、 必要に応じて校正を行います。
校正周期は一律ではなく、 使用頻度、使用環境、要求精度、 過去の校正結果などを考慮して設定します。
Chapter 6
チノーの耐圧防爆形赤外線放射温度計 IR-CZD
チノーのIR-CZDシリーズは、 可燃ガスや可燃性液体の蒸気が存在し、 爆発の危険がある環境でも温度を測定できる 耐圧防爆形の放射温度計です。
IR-CZDシリーズは、 産業安全技術協会の認定品 「Ex db ⅡB T5 Gb」です。 型式検定合格番号は 第TC22717X号 です。
温度範囲別に3シリーズをラインアップ
| 形式 | 主な検出素子 | 測定温度範囲 |
|---|---|---|
| IR-CZDP | InGaAs | 80~1400℃ |
| IR-CZDI | InGaAs | 200~2000℃ |
| IR-CZDS | Si | 450~3500℃ |
実際の測定範囲は形式や測定条件によって異なります。 また、測定距離と測定径の関係を確認したうえで、 対象物を十分にカバーできる機種を選定することが重要です。
防爆構造
防爆環境で使用するための 耐圧防爆形構造を採用しています。
小形・軽量
防爆構造でありながら、 小形・軽量化を実現しています。
測定窓の保守性
シーリングウィンドウと組み合わせることで、 測定窓のメンテナンス性を高められます。
非危険場所からの操作
設定表示器との組み合わせにより、 非危険場所から操作できる構成があります。
FAQ
耐圧防爆放射温度計についてよくある質問
Q. 一般的な放射温度計を防爆エリアで使えますか?
一般の放射温度計をそのまま防爆エリアで使用できるとは限りません。 使用場所の条件と機器の防爆仕様・認証情報を確認し、 適合する機器を選定する必要があります。
Q. 耐圧防爆とは何ですか?
耐圧防爆は、 防爆構造の一つです。 機器内部で発生した爆発に耐え、 その火炎などが外部の爆発性雰囲気へ 伝わらないようにする考え方に基づいています。
Q. 防爆対応なら、どの危険場所でも使えますか?
いいえ。 防爆機器には防爆構造や機器の保護レベルなどによる条件があり、 使用する危険場所に適合するかを確認する必要があります。 製品の型式表示や認証情報、設置条件を確認してください。
Q. IR-CZDシリーズの測定温度範囲は?
形式によって異なります。 IR-CZDP、IR-CZDI、IR-CZDSの3シリーズがあり、 それぞれ温度範囲が異なります。 詳細な測定範囲や精度は製品仕様をご確認ください。
Q. 防爆放射温度計にも校正は必要ですか?
品質管理や工程管理などで測定値を重要な判断材料として使用する場合は、 指示値を定期的に確認し、 必要に応じて校正を行うことが重要です。 校正方法や実施条件は、機器の仕様や用途に応じて確認してください。
まとめ
防爆環境では「防爆仕様」と「温度計測条件」を一緒に確認する
耐圧防爆放射温度計を選ぶときは、 単に「防爆対応かどうか」だけを見るのではなく、 使用する危険場所や要求される防爆条件と、 温度計測に必要な仕様を合わせて確認することが重要です。
特に、 防爆構造・認証、 測定温度範囲、 測定距離・測定径、 放射率、 設置条件、 保守・校正までを一つの測定系として考えることで、 導入後のトラブルを減らしやすくなります。
使用場所を確認する → 防爆仕様を確認する → 温度計測条件を確認する → 設置・保守まで検討する
チノーでは、 耐圧防爆形赤外線放射温度計IR-CZDシリーズをはじめ、 放射温度計、温度校正装置、校正サービスなど、 温度計測に関する製品・サービスを提供しています。
Reference
防爆についてさらに詳しく知りたい方へ
防爆機器の使用条件や検定・規格については、 公的機関・専門機関の最新情報も確認してください。
※外部サイトへ移動します。 防爆に関する法令、規格、検定・認証条件は最新情報をご確認ください。