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熱電対とは?温度を測る仕組み

熱電対は、温度差を電気信号へ変換して温度を測る温度センサです。ここでは、熱電対の基本原理と測定器で温度が表示されるまでの流れを整理します。

熱電対は異なる金属の組み合わせで温度を測る

熱電対は、異なる種類の金属を組み合わせてつくられた温度センサです。2種類の金属を接続し、測定側の接点と基準側との間に温度差が生じると、電圧が発生します。この電圧を利用して温度を求めます。

熱電対にはK、N、E、J、T、R、S、Bなど複数の種類があり、使用する金属の組み合わせによって熱電特性が異なります。

ゼーベック効果と熱起電力とは

異なる2種類の金属に温度差を与えると電圧が発生する現象をゼーベック効果と呼びます。このとき発生する電圧が熱起電力です。

熱電対では、この熱起電力と温度との関係を利用して測定対象の温度を求めます。熱起電力は非常に小さいため、熱電対の種類に対応した測定器や適切な配線が必要です。

熱起電力から温度を求める仕組み

熱電対が発生する熱起電力は、測温接点だけの温度で単純に決まるものではありません。測定器側では基準側の温度を考慮して補正する必要があります。この補正を冷接点補償と呼びます。

熱電対による温度測定は、センサだけで完結するものではありません。熱電対、配線、測定器を組み合わせて、熱起電力を温度へ変換します。

熱電対と測温抵抗体は何が違う?

熱電対と測温抵抗体は、どちらも接触式温度測定で広く使われるセンサですが、温度を検出する原理が異なります。熱電対は熱起電力を利用し、測温抵抗体は金属の抵抗値変化を利用します。

高温や広い温度範囲を測定する場合は熱電対、比較的高い精度や安定性を重視する場合は測温抵抗体が候補になることがあります。ただし、実際には測定対象、使用環境、応答速度、設置方法などを合わせて判断します。

温度センサ全体から選び方を整理したい場合は、温度計測機器の選び方も参考になります。

02

熱電対にはどんな種類がある?

熱電対は、組み合わせる金属によって種類が分かれます。代表的な種類を知り、温度だけでなく使用環境まで含めて候補を絞り込みます。

K・N・E・J・T熱電対の特徴

K、N、E、J、Tは、工業用の温度測定などで使われる代表的な熱電対です。特にK熱電対は広く利用されていますが、「一般的だからK」と決めるのではなく、測定温度や使用環境に適した種類を選ぶ必要があります。

それぞれの種類で熱起電力特性や適する温度域、雰囲気などが異なります。実際の選定では、適用する規格と使用するセンサの仕様を確認し、測定条件に合う種類を選びます。

R・S・B熱電対の特徴

R、S、B熱電対は、高温域の温度測定で候補になる熱電対です。高温炉などで使用されますが、単純に「高温だからR・S・B」と決めるのではなく、測定温度、使用時間、雰囲気、必要な安定性、保護構造などを合わせて考えます。

熱電対の種類は温度範囲だけで決めない

熱電対の種類を決めるとき、まず温度範囲を確認することは重要です。しかし、それだけでは十分ではありません。酸化性・還元性などの雰囲気、腐食性ガス、連続使用時間、必要な測定精度、応答速度などによって適した構成が変わります。

種類ごとの特徴を比較する

種類 大まかな位置付け 選定時に確認すること
K 工業用途で広く使われる代表的な熱電対 温度範囲、雰囲気、構造、耐久性
N 高温域を含む用途で使われる熱電対 使用温度、安定性、雰囲気
E・J・T 用途や温度域に応じて使い分ける熱電対 温度域、感度、使用環境
R・S 高温測定で候補になる熱電対 測定温度、安定性、保護構造
B 高温側の用途で候補になる熱電対 温度、雰囲気、保護構造

具体的な測定可能範囲や許容差は、JISなどの適用規格と、実際に使用する製品の仕様を分けて確認してください。

03

熱電対の構造にはどんな違いがある?

熱電対は「KかRか」といった素子の種類だけでなく、センサとしての構造でも特性が変わります。

シース熱電対とは?

シース熱電対は、金属製のシース内部に熱電対素線を収め、その周囲へ酸化マグネシウム(MgO)などの無機絶縁材を高密度に充填した構造の温度センサです。細径化しやすく、絶縁性や気密性、耐振性を確保しやすいことから、さまざまな産業用途で使われています。

シース外径、長さ、シース材質、熱電対の種類、測温接点の構造には複数の選択肢があります。必要な応答性や耐久性、取り付け条件に応じて組み合わせを検討します。

ソリッドパック熱電対とは?

ソリッドパック熱電対は、熱電対素線と絶縁材を保護管内に組み込んだ、比較的堅牢な工業用温度センサです。シース熱電対とは構造や寸法の考え方が異なるため、応答性だけでなく、機械的強度や使用環境、取り付け条件を含めて選びます。

汎用形・被覆形など、用途に応じた構造

熱電対にはシース形だけでなく、汎用形や被覆熱電対などもあります。被覆熱電対は熱電対素線にビニールやガラスウールなどの被覆を施し、保護管などには入れずに使用する構造です。

つまり、「熱電対の種類」と「センサの構造」は別々の選定条件として考える必要があります。

接地形・非接地形・露出形の違い

測温接点 特徴 確認したいこと
接地形 シース側へ熱が伝わりやすい構造 応答性と電気的な条件
非接地形 シースと測温接点を電気的に分離 絶縁、ノイズ、接続機器
露出形 測温接点をシース外へ露出 応答性と測定環境

応答性、絶縁性、耐久性、使用環境のどれを重視するかによって適した構造は変わります。

04

熱電対はどう選ぶ?実際の選定手順

熱電対の選定は、素子の種類を決めるだけでは終わりません。測定対象、温度、使用環境、必要精度、構造、材質、寸法、取り付け、配線などの条件を順番に整理していきます。

① 何を、どこで測るのかを決める

最初に確認するのは「何℃を測るか」だけではなく、何の温度を、どこで測るのかです。固体の表面・内部、雰囲気、気体、液体などで適したセンサの形状や取り付け方法が変わります。

② 測定温度から熱電対の種類を絞る

最低温度、通常使用温度、最高温度、一時的なピーク温度、さらに高温状態へさらされる時間を整理します。特に高温用途では、「瞬間的に到達する温度」と「長時間維持する温度」を分けて考えることが重要です。

③ 使用環境から材質を選ぶ

酸化性・還元性雰囲気、腐食性ガス、振動、湿気、圧力などを確認します。高温用途では熱電対素線だけでなく、シースや保護管の材質も重要です。

シースや保護管にはステンレス鋼や耐熱合金などさまざまな材質が使われます。材質ごとに耐熱性、耐酸化性、耐食性などが異なるため、名称だけで決めず、温度と雰囲気、使用時間などの条件に応じて選定します。

④ 必要な応答速度から構造・外径を選ぶ

温度変化が速い工程では、センサの応答性が重要です。一般に感温部を小さくすると熱容量を小さくできるため、応答を速くしやすくなります。

一方で、細径化すると機械的な条件も変わります。応答性だけでなく、振動、強度、取り付け方法、使用温度などとのバランスを考えます。

⑤ 必要な精度を確認する

「測れる」ことと「必要な精度で測れる」ことは同じではありません。工程で許容できる誤差を整理し、熱電対の許容差だけでなく、測定器、配線、取り付けによる影響も含めて考えます。

⑥ 寸法と取り付け方法を決める

外径、センサ長、挿入長、フランジ、ニップル、コンプレッションフィッティング、固定方法などを確認します。設備へ取り付けられることに加え、感温部を測りたい位置へ適切に配置できることが重要です。

取り付け寸法は「設備に付くか」だけでなく、測りたい位置へ感温部を適切に配置できるかという測定性能にも関係します。

⑦ 配線・端子・接続する測定器を確認する

熱電対から測定器までの配線距離、補償導線・延長導線、端子箱、ケーブル、シールド、ノイズ環境、防爆の要否などを確認します。熱電対そのものだけでなく、接続先の表示器、記録計、調節計、変換器まで含めて測定系として選定します。

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一般的な熱電対では難しい測定をどうする?

温度条件が厳しくなるほど、熱電対の種類だけではなく、保護管材質、外径、構造、取り付けまで含めた選定が必要になります。

高温・酸化性雰囲気で長時間測定する

高温用途では、熱電対の種類に加えて、シース・保護管材質と使用環境を確認します。同じ測定温度でも、酸化性・還元性などの雰囲気や連続使用時間によって適する材質は変わります。高温で長時間使用する場合は、耐熱性だけでなく、耐酸化性や経時的な材質変化まで含めて検討します。

高温用材質の製品例

チノーでは、高温用シース熱電対の保護管材質として独自の耐熱合金「チノーアロイX」「チノーアロイB」を採用した製品を用意しています。「チノーアロイ」は株式会社チノー独自の名称であり、高温用保護管材質の一般名称ではありません。

個別製品の耐熱温度や適用条件は、保護管材質だけでなくセンサ全体の仕様と使用環境を含めて確認する必要があります。

細い場所・小さな対象を測定する

小型部品や狭い場所では、センサの大きさそのものが測定上の制約になります。細径のシース熱電対は、狭い場所への挿入や小さな対象の温度測定などで候補になります。

急激な温度変化を測定する

高速応答が必要な場合は、シース径や測温接点の構造を確認します。一般にシース径を小さくして感温部の熱容量を小さくすると、温度変化への応答を速くしやすくなります。一方で、機械的強度や耐久性などとの両立が必要です。

さらに極小部の温度計測を想定した「極細シース熱電対」も用意されています。小さな対象を測る場合には、センサ自体が対象温度へ与える影響も考慮します。

振動・腐食など厳しい環境で測定する

振動や腐食性雰囲気では、熱電対素線だけでなくシースや保護管、固定方法、端子部まで含めて検討します。特に長期間使用する設備では、耐久性と保守性も選定条件になります。

炉・熱処理工程で測定する

炉や熱処理設備では、高温だけでなく、雰囲気、温度分布、長時間使用による劣化、測定値の記録や校正まで考える必要があります。

センサだけを選ぶのではなく、測る → 記録する → 制御する → 正しさを確認するという一連の温度管理として考えると、必要な構成を整理しやすくなります。

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熱電対で正しく測るための注意点

適切な熱電対を選んでも、配線や設置が適切でなければ測定値がずれることがあります。

冷接点補償とは?

熱電対では、測温接点と基準側との温度差に応じて熱起電力が発生します。そのため測定器側では、基準側の温度を考慮した補正が必要になります。これが冷接点補償です。

補償導線・延長導線はなぜ必要?

熱電対と測定器を離して設置する場合、配線を延長する必要があります。このとき、使用する熱電対の種類に対応した補償導線・延長導線を選ぶことが重要です。

補償導線・延長導線には熱電対の種類に対応したものがあるため、異なる種類を混在させず、規格や使用する機器の仕様に従って接続します。

極性を間違えるとどうなる?

熱電対には極性があります。+側と-側を逆に接続すると、温度変化に対して適切な方向の信号として扱えず、不自然な表示の原因になります。センサ、導線、端子、測定器の極性を確認して接続します。

配線ノイズによる誤差を防ぐ

熱電対の信号は小さいため、周囲の電気ノイズの影響を受ける場合があります。電源線などのノイズ源から配線を離す、必要に応じてシールドを使用するなど、設備環境に合わせた対策を検討します。

取り付け位置・挿入深さが測定値に与える影響

センサ自体に問題がなくても、取り付け位置が適切でなければ測定対象の温度を正しく捉えられません。特に配管や炉などでは、測定点から周囲構造へ熱が逃げることによって測定誤差が生じる場合があります。

熱電対の選定と同時に、挿入深さ、固定方法、周囲からの熱の影響まで確認することが重要です。

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熱電対はなぜ劣化する?寿命をどう考える?

熱電対は、使用を続けることで特性が変化する場合があります。寿命を一律の年数で決めるのではなく、使用条件と測定結果から管理します。

高温で使用すると熱電対の特性は変化する

熱電対は使用するうちに、素線の状態が変化して熱起電力特性が変わる場合があります。特に高温で長時間使用する場合には、測定値の変化を確認することが重要です。

酸化・還元・腐食性雰囲気の影響

熱電対の劣化は温度だけでなく、周囲の雰囲気にも影響されます。酸化性、還元性、浸炭性、窒化性、腐食性などの条件によって、熱電対素線やシース・保護管の劣化の進み方が変わります。

同じ温度で使っていても、酸化・還元性、浸炭・窒化性、燃焼炉などの条件が異なれば、適した材質や構造も変わります。

保護管・シースの劣化にも注意する

センサの点検では、熱電対素線だけでなく、シースや保護管についても腐食、変形、摩耗などを確認します。外側の保護構造が劣化すると、内部の熱電対にも影響する場合があります。

交換時期は使用条件と測定結果から判断する

熱電対の寿命を一律に「何年」と決めることはできません。使用温度、使用時間、雰囲気、熱サイクル、振動などが異なるためです。

実務では、使用履歴、外観点検、異常値の発生、過去の校正結果、工程の重要度などを組み合わせて、点検・校正・交換の周期を決めていきます。

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熱電対の正しさを維持するには?点検・校正の考え方

熱電対が動作していることと、正しい温度を示していることは同じではありません。必要な用途では、点検と校正を組み合わせて測定の信頼性を管理します。

点検と校正は何が違う?

点検は、外観、断線、取り付け状態などからセンサが正常に使用できる状態かを確認する作業です。

校正は、基準となる温度と比較し、測定値との差を確認する作業です。「動いている」ことと「正しい値を示している」ことは分けて考えます。

熱電対の校正では何を確認する?

必要な温度点で基準と比較し、測定系の差を確認します。具体的な校正方法や範囲は、熱電対の種類、用途、要求精度などによって異なります。

校正周期はどう決める?

校正周期は一律ではありません。使用温度、使用環境、工程の重要度、過去の校正結果、社内基準、規格要求などをもとに決定します。

センサだけでなく測定系全体で考える

実際の温度測定には、熱電対、配線、変換器、表示器、記録計、調節計など複数の要素が関係します。そのため、必要に応じて測定系全体の信頼性を確認することが重要です。

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熱電対を選ぶ前に確認したい項目

熱電対を選ぶ前に、次の項目を整理しておくと、測定条件に合う種類・構造・仕様を検討しやすくなります。すべてを最初から決める必要はありません。

分類 確認すること
測定対象 何を測るか 固体、液体、気体、炉内、表面、内部など
測定位置 どこを測るか 配管内部、炉内、設備表面など
温度 どの範囲か 最低、常用、最高、ピーク温度
使用時間 高温状態がどれだけ続くか 連続、間欠、短時間
熱電対種類 どの種類を使うか K、N、E、J、T、R、S、Bなど
精度 どの程度の誤差を許容できるか 工程管理値、許容差、校正要求
構造 どの構造にするか シース、ソリッドパック、汎用形、被覆形など
測温接点 接点構造をどうするか 接地、非接地、露出など
材質 シース・保護管材質をどうするか SUS304、SUS316、SUS310S、NCF600など
寸法 外径・長さ・挿入長 設備条件と必要な測定位置から決定
取り付け どう固定するか フランジ、ニップル、コンプレッションフィッティングなど
配線 熱電対から測定器までどう接続するか 補償導線・延長導線、ケーブル長
環境 周囲にどんな条件があるか 酸化、還元、腐食、振動、湿気、ノイズ
保守 導入後どう管理するか 点検、校正、交換

この項目がすべて決まっていなくても、分かる範囲を整理しておくと、温度センサの候補を絞り込みやすくなります。

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FAQ

よくある質問

熱電対と温度センサは同じものですか?

熱電対は温度センサの一種です。温度センサには、熱電対、測温抵抗体、サーミスタなどの接触式センサや、放射温度計のような非接触式センサがあります。

K熱電対はどのような用途に向いていますか?

K熱電対は工業用途で広く使われる代表的な熱電対です。ただし、測定温度だけでなく、使用環境、必要精度、構造、耐久性などを確認して選定します。

熱電対とPt100はどちらを選べばよいですか?

高温や広い温度範囲を測定する場合は熱電対、比較的高い精度や安定性を重視する場合はPt100などの測温抵抗体が候補になることがあります。ただし、実際には測定対象、使用環境、応答速度、設置方法などを含めて判断します。

シース熱電対とは何ですか?

金属製のシース内部に熱電対素線を収め、その周囲へ絶縁材を充填した構造の熱電対です。細径化しやすく、狭い場所の測定や高速応答が求められる用途などで利用できます。

熱電対は細いほど応答が速くなりますか?

一般に感温部を小さくすると熱容量を小さくできるため、応答を速くしやすくなります。ただし、機械的強度、使用温度、振動、取り付け方法などとのバランスが必要です。

補償導線を普通の電線で代用できますか?

熱電対の配線では、使用する熱電対の種類に対応した補償導線・延長導線を選ぶことが重要です。不適切な導線や接続は測定誤差につながるため、仕様を確認してください。

熱電対には寿命がありますか?

あります。ただし、一律に何年と決められるものではありません。使用温度、使用時間、雰囲気、熱サイクル、振動などによって劣化の進み方が変わるため、使用履歴や点検、校正結果などをもとに管理します。

熱電対は定期的に校正する必要がありますか?

測定値の信頼性が求められる用途では、定期的な点検や校正が重要です。校正周期は、使用条件、工程の重要度、過去の校正結果、社内基準、規格要求などをもとに決定します。

References

参考情報

製品仕様、使用温度、許容差、材質、寸法、対応規格などは製品ごとに異なります。導入・更新時は最新の製品仕様書、カタログ、取扱説明書などをご確認ください。