光(赤外線)の反射・干渉について

 

1. 薄膜測定について

光は薄膜を透過、反射する際、その表面反射と、裏面での反射がお互い干渉しあう現象が起きます。これは身近では薄い油膜や、シャボン玉が虹色に見える現象と同じです。
赤外線も同じで、近赤外(0.7~3μm)においては一般に15μm以下の極薄領域になると近赤外線はフィルムや塗工膜の表面反射と裏面(境界面)反射光が、その光路長差による光の位相差からお互いが干渉し合う現象が見られます。
*ただし必ず干渉が出るわけでなく、表面状態が散乱面(細かい凹凸がある状態)などでは反射光が散乱されそのため干渉現象が出ません。
この光干渉のモデル図を以下に示します。

表面反射と裏面(境界面)反射光の位相差のズレ

2. P偏光方式

前項で述べた薄膜を計測する場合に生じる光干渉を避けるには以下に示すP偏光方式があります。この方式は測定光路中に偏光フィルター(*1)を入れ、光の偏光成分P波(縦波)(*2)とS波(横波)のうちP波だけを取りだし照射することで表面反射をカットする事ができ、そのため光干渉を除去できる方式です。

*1:光は前に述べたように電磁波の一種で、電磁波は電荷(電流)の流れ(変化)により電場(磁場)が生じます。したがって、この電荷(電流)の流れ方向に光は振動していると言えます。この振動方向は通常の光では様々な方向が重なり合い、全体としては無偏光な状態となっています。この無偏光の光からある一方向の光だけを取り出すのが偏光フィルターです。偏光フィルターはミクロ的に細かいスリットが同方向に等間隔で並んだもので、これを通過する際に、光はその向きの振動成分だけが透過し、偏光成分を取り出す事ができます。

*2:P波とはParallel polarization(平行波)の意味で照射面内に平行な光(下記図では縦波)のことをさします



光干渉を除去する方式は、このP偏光の光の入射角度と反射率の特性を利用することで干渉を除去可能としています。(下図グラフ参照)

P波、S波入射角度に対する反射率グラフ

この図を見ますと、P波の反射率がある特定の角度で0%となっていることがわかります。この角度は偏光角(ブリュスター角)と呼び、次式であらわされます。

 偏光角θ=tan-1 (n/n0) 
(n0=空気の屈折率、n=測定物の屈折率)


この偏光角は、高分子の場合一般に57~58°となり、この角度で光を投光すれば表面反射がなくなる事から光干渉せず計測が可能となります。

当社の極薄用厚さ計(IRMTシリーズ)は、このP偏光方式を採用することで、薄膜の成分(厚さ、等)を光干渉の影響を受ける事無く、高精度での計測を実現しています。